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  • PLATEAU MCPは自治体GISを変えるのか~公共空地分析から見えた可能性と課題~

    PLATEAU MCPを利用して都市データ分析を検証。公共空地集計や空間ID検索を実施し、自治体業務での活用可能性と課題を評価します。

    はじめに

    最近、AIエージェントとMCP(Model Context Protocol)が話題になっています。

    GIS分野でも、

    • ArcGIS MCP
    • GitHub MCP
    • PLATEAU MCP

    などが登場し、自然言語でGISデータを扱える環境が整いつつあります。

    そこで今回は、国土交通省が公開しているPLATEAU MCPを実際に利用し、自然言語だけで都市データ分析は可能なのかを検証してみました。


    PLATEAU MCPとは

    PLATEAU MCPは、PLATEAUが公開している3D都市モデルをAIエージェントから利用するための仕組みです。

    従来であれば、

    • PLATEAUサイトから対象データを探す
    • CityGMLをダウンロードする
    • ArcGIS ProやQGISへ変換する
    • 必要な属性を抽出する

    といった作業が必要でした。

    PLATEAU MCPでは、

    「和泉市の公共空地を集計してください」

    のような自然言語で指示を出すことができます。

    まず最初に確認したこと

    PLATEAU MCPを導入したものの、

    最初は何ができるのか分かりませんでした。

    そこで最初に次の質問を行いました。

    PLATEAU MCPで利用可能なツール一覧を表示してください

    すると、

    • データセット検索
    • CityGML検索
    • 空間ID検索
    • 建物属性取得

    などの機能が利用できることが分かりました。

    ここで初めて、

    PLATEAU MCPは分析ソフトではなく、PLATEAUデータを探索するためのAIインターフェース

    であることが理解できました。

    まずはどんなデータがあるのか調べてみた

    最初に次の質問を行いました。

    和泉市のPLATEAUデータセットを調査してください。

    すると、PLATEAU MCPから次の情報が返ってきました。

    地域情報

    項目内容
    地域名和泉市
    地域コード27219
    地域種別CITY
    平面直角座標系EPSG:6674
    利用可能年度2023
    登録年度2024
    PLATEAU仕様4.1
    CityGML取得可能

    利用可能なデータセット

    確認できた主なデータセットは以下のとおりです。

    都市モデル

    • 建築物モデル(bldg)
    • 土地利用モデル(luse)

    防災モデル

    • 洪水浸水想定区域モデル(fld)
    • 土砂災害警戒区域モデル(lsld)

    都市計画モデル

    • 区域区分
    • 用途地域
    • 地区計画
    • 公共空地
    • 都市計画区域
    • 市街地再開発事業
    • 土地区画整理事業
    • 防火地域
    • 特別用途地区

    など


    特に興味深かったのは、

    道路モデル(tran)は存在しなかった

    ことです。

    PLATEAUは全国で同じデータが整備されているわけではなく、自治体ごとに整備状況が異なることも確認できました。


    さらにPLATEAU MCPは、

    このデータがあります

    だけではなく、

    実際に取得できるCityGMLファイルまで示してくれました。

    例えば土地利用モデルでは、

    513544_luse_6697_op.gml
    513553_luse_6697_op.gml

    などのファイルが利用可能であることが分かりました。


    公共空地を分析してみる

    データが存在することが確認できたので、

    次は土地利用モデルを利用して分析を行いました。

    ここで登場するのが公共空地(217)です。

    公共空地とは

    • 公園
    • 緑地
    • 広場
    • 運動場

    などを含む土地利用区分です。

    今回入力したプロンプトは以下です。

    PLATEAU MCPを使って

    公共空地の

    ・件数
    ・面積
    ・分布

    を集計してください

    と質問しました。


    すると、AIは和泉市の土地利用モデル(luse)を探索し、対象となるCityGMLを特定して集計を実施しました。

    使用されたデータ

    項目内容
    自治体大阪府和泉市
    年度2023
    データ種別土地利用モデル(luse)
    対象分類公共空地
    分類コード217
    対象CityGML513543、513544、513553、513554

    件数・面積

    集計結果は以下のとおりです。

    指標
    件数94件
    総面積1,909,271㎡
    総面積190.93ha
    平均面積20,311㎡
    中央値7,838㎡
    最大面積234,272㎡
    最小面積246㎡

    単なる件数集計だけでなく、平均値や中央値まで整理されました。


    メッシュ別分布

    さらに、どのメッシュに公共空地が分布しているかも集計されました。

    メッシュ件数面積
    5135432件13,430㎡
    5135440件0㎡
    51355392件1,895,841㎡
    5135540件0㎡

    結果を見ると、

    公共空地の大部分が513553メッシュに集中している

    ことが分かります。


    空間分布

    さらにAIは重心位置から空間分布まで整理しました。

    区分件数面積
    西部・北側13件153,935㎡
    中部・北側33件606,608㎡
    中部・南側24件597,171㎡
    東部・北側15件350,679㎡
    東部・南側9件200,878㎡

    この結果から、

    • 中部・北側
    • 中部・南側

    に公共空地が多く分布していることが読み取れます。


    面積規模別の特徴

    さらに面積規模別に分類すると、

    • 1,000~10,000㎡の公共空地が最も多い
    • 一方で50,000㎡以上の大規模公共空地は8件しかない
    • しかし面積では全体の約54%を占める

    という特徴も確認できました。


    正直驚いた点

    ここで驚いたのは、私が依頼したのは

    件数
    面積
    分布

    だけだったことです。

    しかし実際には、

    • 件数
    • 総面積
    • 平均値
    • 中央値
    • 最大値
    • メッシュ分布
    • 方位別分布
    • 面積規模別分析

    まで自動的に整理されました。

    AIは何をしていたのか

    実際にはAIは次の処理を行っています。

    土地利用モデル検索

    CityGML特定

    不足データ確認

    データ取得

    ジオメトリ解析

    面積計算

    集計

    結果出力

    利用者は自然言語で質問しただけです。

    AIが実施した処理

    ① 土地利用モデル(luse)を検索

    ② 対象CityGMLファイルを特定

    ③ 不足メッシュを検出

    ④ CityGMLを取得

    ⑤ ジオメトリを解析

    ⑥ 面積を計算

    ⑦ 分布を集計

    ⑧ 結果を整理

    従来であればGIS担当者が複数のツールを使って実施していた作業です。


    空間ID検索も試してみた

    公共空地分析の次に、PLATEAU MCPの特徴的な機能である「空間ID検索」も試してみました。

    今回は和泉市役所周辺を対象に、

    和泉市役所周辺の空間ID検索例を示してください

    と質問しました。

    するとAIは、

    • 市役所の位置情報を取得
    • 緯度経度を十進度へ変換
    • 空間IDを生成
    • 対応するCityGMLを検索
    • 交差する建物を取得
    • 建物属性を取得

    という処理を実施しました。


    生成された空間ID

    市役所位置から生成された空間IDは次のとおりです。

    19/0/459368/208584

    また、周辺8セルを含めた9セル検索も実施されました。


    建物検索結果

    空間IDに交差する建物を検索した結果、

    bldg_6a445e5d-cf54-4a50-8653-b6d8ce7510e2

    という建物が取得されました。

    さらに周辺9セルで検索すると、

    32棟の建物

    が取得されました。


    取得できた建物属性

    取得された建物からは次のような属性が確認できました。

    項目結果
    建物ID27219-bldg-72179
    建物高さ29.4m
    土地利用公益施設用地
    土地利用コード214
    都市計画区域都市計画区域
    区域区分市街化区域
    調査年2023

    さらに、

    • 建物中心座標
    • 建物範囲
    • 標高

    まで取得できました。


    正直驚いた点

    ここで興味深かったのは、

    私が知りたかったのは

    市役所周辺の建物

    だけだったことです。

    しかし実際には、

    • 空間ID生成
    • 建物検索
    • 建物属性取得
    • 土地利用判定
    • 都市計画区域判定

    まで実施されました。

    従来であれば、

    PLATEAU ViewerやGISソフトを開いて確認していた内容です。


    自治体業務ではどう使えるのか

    今回の結果を見て感じたのは、

    空間IDは単なる研究用途ではなく、自治体業務にも応用できる可能性があるということです。

    例えば、

    • 公共施設台帳との照合
    • 防災施設の位置確認
    • 現地調査地点の管理
    • 3D都市モデルとの連携

    などです。

    一方で、PLATEAUの属性には建物名称が入っていません。

    そのため、

    今回取得した建物を

    「和泉市役所本庁舎」

    と断定するには、

    • 航空写真
    • 公共施設台帳
    • ArcGISの施設データ

    との照合が必要になります。


    処理時間はデータ量によって大きく変わる

    今回の検証では、対象データによって処理時間に大きな差が見られました。

    公共空地(217)の分析では、

    • 対象件数:94件
    • 対象ファイル:4ファイル

    だったため、件数・面積・分布の集計は約3分で完了しました。

    一方で、建築物モデルを対象とした調査では、

    • 建築物数:約64,000棟
    • CityGMLファイル数:81ファイル
    • 対象範囲:和泉市全域

    となり、建物数や利用可能属性の集計に約23分を要しました。

    これはPLATEAU MCPの性能というよりも、解析対象となるCityGMLデータ量の違いによるものです。


    従来作業との比較

    同じ分析を従来のGIS作業で行う場合を考えてみます。

    従来の作業

    • PLATEAUデータ検索:10分
    • CityGML取得:5分
    • ArcGIS Pro変換:15分
    • 属性確認:10分
    • 公共空地抽出:5分
    • 面積計算:5分
    • 集計表作成:10分

    合計:約60分

    MCP+AI

    • 自然言語による指示
    • 自動解析
    • 結果出力

    実行時間:約3分

    もちろん結果確認は必要ですが、調査作業だけで見れば大幅な時間短縮になります。


    実際に使って感じたこと

    今回の検証を通じて感じたのは、PLATEAU MCPは「GIS解析ソフト」ではなく、「PLATEAUデータ探索エンジン」として非常に優秀だということです。

    特に、

    • どのデータが存在するのか
    • どのCityGMLを使うべきか
    • どの属性が利用できるのか

    といった事前調査に強みがあります。

    一方で、

    • 高度な空間解析
    • 自治体独自データとの統合分析
    • Webマップ作成
    • ダッシュボード構築

    については、引き続きArcGISなどのGIS環境が必要になります。

    つまり、

    PLATEAU MCPがGISを置き換えるのではなく、

    「GIS解析を始める前の調査作業を大幅に効率化するツール」

    と考えるのが実態に近いと感じました。


    今後の可能性

    今回の検証では、

    自然言語

    PLATEAU MCP

    CityGML特定

    AI解析

    面積集計

    という流れが実現できました。

    今後は、

    • PLATEAU MCP
    • ArcGIS MCP
    • e-Stat MCP
    • GitHub MCP

    を組み合わせることで、

    「高齢者が多く、公共空地が少なく、健康遊具が不足している地域はどこか」

    といった自治体課題に対しても、自然言語で分析できる可能性があります。

    今回の検証を通じて、PLATEAU MCPはGIS解析ツールというよりも、PLATEAUデータを効率よく活用するための入口として非常に有効であることが確認できました。

  • e-Stat APIとGISを結合するときの落とし穴

    ~AIエージェントによる統計データクレンジングの実践~

    本記事は、生成AIとGISを活用した自治体業務の実証シリーズの第5回です。
    関連記事

    ▶ 第1回:自治体GISとAIの融合
    ▶ 第2回:ArcGIS Onlineと生成AIを連携した人口統計分析の実証
    ▶ 第3回:生成AIとGISで健康遊具の優先整備地区を抽出してみた
    ▶第4回:自治体の人材不足はGIS AIで解決できるのか

    はじめに

    近年、e-Stat APIを利用することで自治体の人口統計を容易に取得できるようになりました。

    生成AIやMCPを利用すれば、

    ・統計データ取得
    ・CSV出力
    ・GIS登録

    まで自動化することも可能です。

    しかし実際に自治体業務で利用しようとすると、単純なAPI連携だけでは解決できない問題が存在します。

    今回は和泉市の小地域統計データを用いて、e-Stat APIとGISデータを結合する際に直面した課題を整理します。


    和泉市データで発生した問題

    まずe-Stat APIから2020年国勢調査データを取得しました。

    取得結果は以下の通りです。

    • 人口CSV:192件

    一方でGIS側の小地域ポリゴンは、

    • ポリゴン数:183
    • ユニークKEY_CODE:162

    でした。

    この時点で、

    「CSV件数とGIS件数が一致しない」

    という問題が発生しました。

    単純な属性結合では正しく結合できません。


    落とし穴① 町集計と町丁目が混在している

    e-Statには、

    府中町

    だけではなく、

    • 府中町一丁目
    • 府中町二丁目
    • 府中町三丁目

    なども同時に存在します。

    さらに、

    府中町

    一丁目~八丁目

    の合計値となっています。

    つまり、

    町集計

    町丁目

    をそのままGISへ取り込むと、

    人口が二重計上されます。


    落とし穴② KEY_CODEが一意ではない

    和泉市小地域ポリゴンを確認すると、

    KEY_CODE

    だけでは一意になっていませんでした。

    例えば、

    27219101000_E1
    27219101000_E2
    27219101000_E3

    のように、

    同じKEY_CODEでも複数ポリゴンが存在します。


    落とし穴③ 人口はE1にしか入っていない

    統計データを確認すると、

    • E1 → 人口あり
    • E2 → 0
    • E3 → 0

    という構造になっていました。

    この状態でKEY_CODEだけを使ってJoinすると、

    同じ人口が複数ポリゴンへ付与されてしまいます。

    結果として人口が重複計上されます。


    解決策:JOIN_KEYを作成する

    今回採用した方法は、

    GIS側

    JOIN_KEY

    KEY_CODE + “_” + KIGO_E

    を作成する方法です。

    CSV側も同様に、

    join_key

    area_code_text + “_” + KIGO_E

    を生成します。

    その結果、

    183ポリゴン

    183レコード

    で正しく結合できるようになりました。

    ArcGIS Pro と CSV 結合で発生する schema.ini の落とし穴

    前回の和泉市の分析では、小地域ポリゴンと e-Stat API の人口データでコード体系が一致していなかったため、

    KEY_CODE = KCODE_JE + KCODE_E
    

    による JOIN_KEY を作成して結合を行いました。

    一方、今回の豊島区データでは、小地域ポリゴンの

    area_code
    

    と e-Stat API の

    KEY_CODE
    

    が同じコード体系であったため、JOIN_KEY を作成せずに直接結合できる状態でした。

    ところが、ここで別の問題が発生しました。

    それは ArcGIS Pro が CSV を読み込む際に、コード項目を数値型(Double)として認識してしまうことです。

    例えば、

    13116001001
    

    という小地域コードは、本来は文字列として扱う必要があります。

    しかし ArcGIS Pro は CSV を自動判定するため、

    小地域ポリゴン
    area_code(Text)
    
    人口CSV
    KEY_CODE(Double)
    

    という状態になることがあります。

    この場合、値は同じでも型が異なるため Join が実行できません。

    そこで利用するのが schema.ini です。

    CSV と同じフォルダに schema.ini を配置し、

    [toshima_demographics_2020.csv]
    Format=CSVDelimited
    ColNameHeader=True
    
    Col1=municipality_name Text Width 50
    Col2=year Long
    Col3=KEY_CODE Text Width 20
    Col4=area_name Text Width 50
    Col5=population_total Long
    

    のように定義します。

    重要なのは、

    Col3=KEY_CODE Text Width 20
    

    です。

    これにより ArcGIS Pro は KEY_CODE を文字列として読み込みます。

    結果として、

    area_code (Text)
    =
    KEY_CODE (Text)
    

    となり、正常に Join できるようになります。

    なお、インターネット上では

    CharacterSet=65001
    

    を記載している例もありますが、ArcGIS Pro では

    schema.ini に値が無効なオプションがあります
    CharacterSet=65001
    

    というエラーが発生することがあります。

    そのため UTF-8 の CSV を利用する場合でも、CharacterSet の指定は行わず、必要なフィールド定義のみを記述する方が安全です。

    今回のように自治体によって、

    • JOIN_KEY の作成が必要なケース(和泉市)
    • KEY_CODE をそのまま利用できるケース(豊島区)

    があります。

    ただし、どちらの場合でも ArcGIS Pro 上では「文字列として結合できる状態にする」ことが重要であり、そのための手段として schema.ini が有効です。


    MCP化して分かったこと

    今回の検証で分かったのは、

    e-Stat APIが利用できること

    自治体業務で使えるGISデータになること

    は全く別問題だということです。

    実際には、

    • 統計構造の理解
    • 秘匿処理の理解
    • 小地域コードの理解
    • GIS側データ構造の理解

    が必要になります。

    今回作成したMCPでは、

    • 総人口
    • 0~14歳人口
    • 65歳以上人口
    • CSV出力
    • GIS結合用JOIN_KEY生成

    まで自動化しています。


    AIにe-Stat APIを読ませても実務データにはならない

    生成AIはe-Stat APIを利用できます。

    しかし、

    APIが返したデータ

    実務で利用できるGISデータ

    ではありません。

    今回の検証では、

    豊島区では問題なく動いた処理が、

    和泉市では正しく動きませんでした。

    原因を追跡すると、

    KEY_CODE

    KIGO_E

    秘匿処理

    JOIN_KEY

    という統計構造の違いにたどり着きました。

    つまり、

    AIがデータを取得できること

    自治体業務で利用できること

    の間には大きな差があります。


    次のステップは「年齢階級」の細分化

    現在のMCPでは、

    • 総人口
    • 0~14歳人口
    • 65歳以上人口

    を取得しています。

    しかし遊具配置を考える場合、

    本当に必要なのは

    0~14歳

    ではありません。

    例えば、

    • 幼児用すべり台
    • 幼児用ブランコ
    • スプリング遊具
    • 砂場
    • おむつ替え設備

    などは、

    主に0~4歳児を対象としています。

    そのため次の段階では、

    • 0~4歳人口
    • 5~9歳人口
    • 10~14歳人口

    を取得し、

    より実態に即した分析を行う予定です。


    今後想定される分析の方向性

    今回の検証では、小地域単位で人口統計をGISへ結合できることを確認しました。

    今後、公園ごとの遊具配置情報や遊具台帳などのデータが利用できれば、人口統計と組み合わせた分析も可能になります。

    例えば、

    小地域人口

    遊具配置情報

    を組み合わせることで、

    0~4歳人口100人あたりの幼児向け遊具数

    といった指標を作成できる可能性があります。

    また、

    幼児遊具不足指数

    =
    0~4歳人口
    ÷
    幼児向け遊具数

    のような考え方により、

    子育て世代が多い地域と遊具配置状況との関係を可視化できる可能性があります。

    現在は構想段階ですが、人口統計と公園施設データを組み合わせることで、公園整備や子育て支援施策の検討材料として活用できる可能性があると考えています。

    本手法はe-Stat APIを活用しているため、和泉市に限らず他自治体へも適用可能です。

    今後は、実際の施設データと組み合わせながら、GISと統計データを活用した政策検討支援についても研究を進めていきたいと考えています。

    AIエージェントによるデータ整備という視点

    今回の検証は、単にe-Stat APIから人口データを取得したという話ではありません。

    実際には、

    e-Stat API

    統計コードの確認

    KEY_CODEの確認

    KIGO_Eの確認

    秘匿化構造の確認

    JOIN_KEY生成

    CSV出力

    ArcGIS結合

    という複数の工程を経ています。

    表面的には「人口マップを作成した」ように見えますが、実際に時間を要したのは統計構造の理解とデータ整備でした。

    和泉市のケースでは、

    ・人口CSV:192レコード
    ・小地域ポリゴン:183ポリゴン
    ・ユニークKEY_CODE:162件

    という状態であり、単純なJoinでは正しく結合できませんでした。

    そのため、

    ・町集計と町丁目の重複確認
    ・KEY_CODEとKIGO_Eの関係確認
    ・秘匿化データの確認
    ・GIS側との整合確認

    を行い、最終的にJOIN_KEYを生成することで正しい結合を実現しました。

    従来であれば、このような作業は統計担当者やGIS担当者が手作業で調査しながら進める必要がありました。

    今回の検証では、生成AIとMCPを活用することで、こうしたデータ整備作業を支援できる可能性を確認しています。

    近年は、

    オープンデータ

    AIエージェント

    データクレンジング

    GIS分析

    意思決定

    という流れが重要になりつつあります。

    単に地図を作成するだけではなく、分析に利用できるデータ基盤を整備すること自体が価値となる時代へ変化しています。

    今回の成果は、e-Stat APIを利用した人口データ取得だけではありません。

    統計データを自治体GISで利用できる形へ変換するための知識とノウハウを整理できたことに、大きな意義があると考えています。


    まとめ

    今回の検証は単なるMCP開発ではありません。

    統計データを取得するだけではなく、

    自治体GISで利用できる形へ変換するための知識を整理するプロセスでした。

    e-Stat APIや生成AIが普及しても、

    統計構造やGISデータ構造を理解することの重要性は変わりません。

    むしろGIS AI時代だからこそ、

    「データを取得する技術」

    ではなく、

    「実務で使えるデータへ変換する知識」

    がますます重要になると考えています。

    MCPで取得した人口データを用いた試験分析

    今回整備したデータを用いて、

    • クラスター・外れ値分析
    • 最適化ホットスポット分析

    を実施しました。

    その結果、

    65歳以上人口については有意な空間集積が確認された一方、

    幼児人口については明確な集積は確認されませんでした。

    これは統計データをGISへ正しく結合できたことで初めて実施できる分析であり、今後は公園施設データや遊具配置データと組み合わせることで、より実践的な政策検討へ発展できる可能性があります。

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  • 自治体の人材不足はGIS AIで解決できるのか

    【自治体GIS×生成AIシリーズ】~総務省調査と実証結果から考える次世代の自治体業務~

    本記事は、生成AIとGISを活用した自治体業務の実証シリーズの第4回です。

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    ▶第5回:e-Stat APIとGISを結合するときの落とし穴

    はじめに

    総務省が公表した「自治体における生成AI導入状況(令和7年6月30日版)」によると、生成AI導入における最大の課題は「取り組むための人材がいない又は不足している(562件)」であり、次いで「AI生成物の正確性への懸念(522件)」となっています。

    自治体では、少子高齢化による職員数の減少や業務量の増加により、限られた人員で多様な行政サービスを維持しなければならない状況が続いています。

    一方で、GIS(地理情報システム)や統計分析は、政策立案や施設管理、防災計画などに有効であることが分かっていても、専門職員が不足しているため十分に活用できていないケースも少なくありません。

    そこで注目されるのが、生成AIとGISを組み合わせた「GIS AI」です。

    本記事では、実際に行った実証結果をもとに、GIS AIが自治体の人材不足にどのように貢献できるのかを考察します。


    なぜGISは広く活用されないのか

    多くの自治体では、GISやダッシュボードは整備されています。

    しかし、

    ・GISソフトの操作が難しい
    ・データ更新に専門知識が必要
    ・統計データの取得が手間
    ・分析結果の解釈が難しい

    といった理由から、実際に活用できる職員が限定される傾向があります。

    結果として、

    「GIS担当者しか使えないシステム」

    になってしまうことがあります。


    GIS AIとは何か

    GIS AIとは、

    GIS

    統計データ

    生成AI

    を組み合わせた新しい業務支援の考え方です。

    従来は職員が行っていた

    ・統計データの検索
    ・CSVの取得
    ・GISへの登録
    ・分析処理
    ・地図作成

    といった作業を、自然言語の指示から実行できるようにすることを目指します。


    実証① 人口統計分析の自動化

    地域GIS研究所では、

    Codex CLI
    + e-Stat API
    + ArcGIS MCP

    を利用し、人口統計分析の自動化を検証しました。

    職員が

    「高齢化率を取得してください」

    と指示すると、

    ・e-Statから統計取得
    ・属性計算
    ・ArcGIS Onlineへの登録
    ・地図化

    までを一連の流れとして実行できることを確認しました。

    従来であれば複数のサイトやシステムを行き来していた作業を大幅に短縮できます。


    実証② 健康遊具の優先整備地区の抽出

    次に、豊島区をモデルケースとして健康遊具の優先整備地区を抽出しました。

    分析では、

    ・高齢化率
    ・人口
    ・既存遊具の配置
    ・250m利用圏

    を組み合わせて評価を行いました。

    従来であれば半日程度かかる作業でしたが、統計データ取得からWebマップ作成まで約25分で完了しました。

    重要なのは、単なる地図作成ではなく、

    「どこに予算を優先投入すべきか」

    という政策判断の支援ができた点です。


    人材を増やすのではなく時間を生み出す

    自治体における人材不足は、短期間で解決できる問題ではありません。

    しかし、GIS AIは職員の代わりに判断するのではなく、

    「判断するための材料を短時間で準備する」

    ことができます。

    例えばAIが統計取得やGIS更新を行っている間、職員は

    ・住民対応
    ・庁内調整
    ・資料作成

    など別の業務を進めることができます。

    これは実質的に人材不足を補完する効果を持っています。


    正確性をどう担保するのか

    生成AI活用において最も懸念されるのが正確性です。

    今回の実証では、

    「推測で人口値を作らない」

    というルールを明示しました。

    さらに、

    ・データソースの明示
    ・統計年次の確認
    ・利用フィールドの確認

    を行い、説明可能な状態を維持しています。

    また、MCP Inspectorを利用することで、

    ・どのデータを参照したか
    ・どの条件で検索したか
    ・どのレイヤを更新したか

    を確認できます。

    これはAI時代のジオプロセシング履歴とも言える仕組みです。


    今後の可能性

    今後は、

    「高齢者が多いのに健康遊具が不足している地域は?」

    「D判定の樹木が集中している公園は?」

    「近くに鉄棒のある公園は?」

    といった問いに対して、職員が自然な言葉で質問し、GIS AIが分析結果を提示する環境が現実味を帯びてきています。

    これは、専門職だけが扱うGISから、全職員が活用できるGISへの転換を意味します。


    まとめ

    総務省調査によると、自治体における生成AI活用の上位は、

    1. 挨拶文作成
    2. 議事録要約
    3. 企画書案作成
    4. メール文作成

    となっています。

    現在は文書作成支援を中心とした活用が主流ですが、

    GISと生成AIを組み合わせることで、

    • 統計データの取得
    • GISデータの更新
    • 空間分析
    • 地図作成
    • 政策判断支援

    までを自然言語で実行できる可能性が見えてきました。

    また、総務省調査では導入課題として

    • 人材不足(562件)
    • AI生成物の正確性への懸念(522件)

    が上位に挙げられています。

    今回の実証では、

    • 推測によるデータ生成を禁止する
    • 利用した統計データを明示する
    • MCPを利用して処理履歴を確認する

    ことで、説明可能性と正確性を確保しながら分析を実施しました。

    GIS AIは人材不足を単純に人員増加で解決するものではありません。

    むしろ、

    • GISの専門性の壁を下げる
    • データ整理の時間を削減する
    • 分析業務を支援する
    • 説明責任を担保する

    ことで、限られた人材の能力を最大限活用するための仕組みとして期待されています。

    地域GIS研究所では、GIS・統計分析・生成AIを組み合わせた自治体業務への活用について、引き続き実証と研究を進めていきます。

    参考資料


    関連記事

    ▶ 第1回:自治体GISとAIの融合
    ▶ 第2回:ArcGIS Onlineと生成AIを連携した人口統計分析の実証
    ▶ 第3回:生成AIとGISで健康遊具の優先整備地区を抽出してみた
    ▶第5回:e-Stat APIとGISを結合するときの落とし穴

  • 生成AIとGISで健康遊具の優先整備地区を抽出してみた

    【自治体GIS×生成AIシリーズ】~高齢者人口データを活用した公園整備の意思決定支援~

    本記事は、生成AIとGISを活用した自治体業務の実証シリーズの第3回です。
    関連記事

    ▶ 第1回:自治体GISとAIの融合
    ▶第2回:ArcGIS Onlineと生成AIを連携した人口統計分析の実証
    ▶第4回:自治体の人材不足はGIS AIで解決できるのか
    ▶第5回:e-Stat APIとGISを結合するときの落とし穴

    背景

    自治体では、

    • 高齢化の進展
    • 健康寿命の延伸
    • 公園施設の老朽化

    が課題となっています。

    一方で予算は限られており、

    どの公園から整備すべきか

    を客観的に判断する必要があります。今回は高齢者人口と健康遊具配置から優先整備地区を抽出する実証を行いました。

    今回の目的

    豊島区を例に、

    65歳以上人口

    健康遊具

    利用圏

    を組み合わせ、

    健康遊具の優先整備地区を抽出しました。

    分析に使用したデータ

    e-Stat

    • 2020年国勢調査
    • 小地域統計
    • 年齢(5歳階級、4区分)別人口から町丁目単位の65歳以上人口

    ArcGIS Online

    • 自社ポータルサイト内の豊島区公園施設データ
    • 健康遊具
    • 公園名称

    公園データ

    自社のArcGIS Onlineに登録済みの豊島区公園施設データを利用しました。

    分析対象は、

    • 健康遊具
    • 公園名
    • 町丁目情報

    です。

    分析の流れ


    e-Stat

    65歳以上人口

    ArcGIS Online

    健康遊具

    生成AI

    ランキング

    WebMap

    実際に入力したプロンプト

    今回の分析では、Codex CLIを利用し、3段階に分けて指示を行いました。

    ①健康遊具不足ランキングの作成

    まず、豊島区遊具施設データと、e-Statの町丁目別高齢者人口を利用し、健康遊具不足ランキングを作成しました。

    主な指示内容は以下のとおりです。

    • ArcGIS Onlineから豊島区遊具施設データを取得
    • 健康遊具のみを抽出
    • e-Statから町丁目単位の65歳以上人口を取得
    • 町丁目名で結合
    • 健康遊具数と高齢者人口から不足度を算出
    • CSVおよびMarkdownで出力

    この段階で、

    「高齢者人口に対して健康遊具が不足している町丁目」

    を一覧化しました。

    ①のプロンプトの詳細

    ArcGIS MCP、e-Stat統計ダッシュボードAPIを使って、豊島区の町丁目単位で「65歳以上人口に対して健康遊具が不足している町目」をランキング表にしてください。

    前提:

    • 豊島区の遊具施設データは、私のArcGIS Online組織アカウントにアップロード済みです。
    • 遊具施設データには、遊具種別を示すフィールドがあるはずです。
    • 健康遊具は、遊具種別フィールドの値から「健康遊具」またはそれに相当する種別を判定してください。
    • 豊島区公式サイト内には町丁目単位の65歳以上人口データがないため、豊島区サイトから探すのではなく、e-Stat統計ダッシュボードAPIまたはe-Stat APIから町丁目単位の年齢別人口を取得してください。
    • 取得できる最新年を使用してください。
    • 町丁目名の表記ゆれがある場合は、正規化して結合してください。
    • 町丁目境界データが必要な場合は、ArcGIS OnlineまたはLiving Atlasから利用可能な公的境界データを検索してください。

    作業手順:

    1. ArcGIS MCPで、私のArcGIS Onlineコンテンツから豊島区の遊具施設データを検索してください。
    2. レイヤ構造を確認し、町丁目名フィールド、遊具種別フィールド、公園名フィールドを特定してください。
    3. 健康遊具のみを抽出し、町丁目単位で件数を集計してください。
    4. e-Stat統計ダッシュボードAPIまたはe-Stat APIから、豊島区の町丁目単位の65歳以上人口を取得してください。
    5. 町丁目名をキーに、65歳以上人口と健康遊具数を結合してください。
    6. 以下の指標を計算してください。
    • 65歳以上人口
    • 健康遊具数
    • 65歳以上人口1,000人当たり健康遊具数
    • 不足度スコア = 65歳以上人口 / max(健康遊具数, 1)
    1. 不足度スコアが高い順にランキング表を作成してください。
    2. 結果をCSVとMarkdownの両方で出力してください。

    出力項目:

    • rank
    • 町丁目名
    • 65歳以上人口
    • 健康遊具数
    • 65歳以上人口1,000人当たり健康遊具数
    • 不足度スコア
    • 該当する公園名
    • 備考

    注意:

    • 町丁目単位の65歳以上人口が取得できない場合は、取得できなかった理由を明記し、代替案として国勢調査小地域、町丁・字等別人口、または住民基本台帳人口の利用可否を整理してください。
    • 推測で人口値を作らないでください。
    • 結果に使ったデータソース、統計年、フィールド名、結合キーを必ず明記してください。

    ② ランキング指標の改善

    初回分析では、

    不足度スコア

    = 65歳以上人口 ÷ 健康遊具数

    を採用しました。

    しかし、

    健康遊具0基の町丁目と1基の町丁目の差が十分に表現できなかったため、指標を改善しました。

    追加した内容は以下のとおりです。

    • 健康遊具なしフラグ
    • 改良版不足度スコア
    • 優先度区分(A~D)
    • 町丁目内の公園一覧

    その結果、

    「どの公園が整備候補となるのか」

    まで把握できるようになりました。

    追加した内容は以下のとおりです。

    • 健康遊具なしフラグ
    • 改良版不足度スコア
    • 優先度区分(A~D)
    • 町丁目内の公園一覧

    ②のプロンプトの詳細

    ランキング指標を修正してください。

    現在の不足度スコア = 65歳以上人口 / max(健康遊具数, 1) では、
    健康遊具0基と1基の差が小さくなっています。

    以下の指標を追加してください。

    1. 健康遊具なしフラグ
      health_equipment_zero = 1 if 健康遊具数 == 0 else 0
    2. 不足度スコア改良版
      shortage_score_v2 =
      65歳以上人口 * 2.0 if 健康遊具数 == 0
      65歳以上人口 / 健康遊具数 if 健康遊具数 >= 1
    3. 優先度区分
      A: 65歳以上人口1000人以上 かつ 健康遊具数0
      B: 65歳以上人口1000人以上 かつ 健康遊具数1以下
      C: 65歳以上人口700人以上 かつ 健康遊具数0
      D: その他
    4. 町丁目内の公園名一覧
      健康遊具がない場合でも、その町丁目内に存在する公園名を別列に出してください。
      列名は all_park_names としてください。

    CSVとMarkdownを再出力してください。

    健康遊具不足ランキング結果例

    順位町丁目65歳以上人口健康遊具数優先度
    1東池袋五丁目1,1060A
    2池袋二丁目1,0250A
    3長崎四丁目9870C
    4要町三丁目9560C
    5上池袋三丁目9510C

    実際の出力


    ③ WebMapの作成

    最後に、ランキング結果を地図化しました。

    主な処理内容は以下のとおりです。

    • 町丁目ポリゴン取得
    • shortage_score_v2との結合
    • 優先度A~Dによる色分け
    • ポップアップ設定

    表示項目は、

    • 町丁目名
    • 65歳以上人口
    • 健康遊具数
    • 不足度スコア
    • 候補公園一覧

    としました。

    これにより、

    ランキング表だけでは分かりにくい地域的な偏在状況を視覚的に把握できるようになりました。

    プロンプト③の詳細

    豊島区健康遊具不足ランキングを地図化してください。

    現在作成済みのCSVを利用し、

    ① 町丁目ポリゴンを取得
    ② shortage_score_v2 を結合
    ③ A~Dを色分け

    A:赤
    B:橙
    C:黄
    D:灰

    でWebMapを作成してください。

    ポップアップには

    ・町丁目名
    ・65歳以上人口
    ・健康遊具数
    ・不足度スコア
    ・候補公園一覧

    を表示してください。

    ③の結果:健康遊具不足ランキング


    ③利用圏を考慮した分析

    そこで次に、

    健康遊具から250mの利用圏を作成しました。

    分析手順は以下のとおりです。

    健康遊具ポイント

    250mバッファ作成

    町丁目ポリゴン

    65歳以上人口との重ね合わせ

    利用圏内人口割合算出

    さらに、

    優先度

    = 65歳以上人口 ×(1 − 利用圏内人口割合)

    として再評価しました。

    プロンプト④の詳細

    豊島区の健康遊具ポイントを使い、250m徒歩利用圏を作成してください。

    町丁目ポリゴンごとに、

    ・65歳以上人口
    ・健康遊具数
    ・健康遊具250m圏内人口割合

    を算出してください。

    新しい優先度を以下で算出してください。

    優先度 =
    65歳以上人口 × (1 – 利用圏内人口割合)

    結果をWebMapとして作成してください。

    ④の結果:健康遊具250m利用圏分析


    分析の結果、

    健康遊具数だけでは優先度が高く見えた町丁目でも、

    近隣公園の利用圏に含まれている場合は優先度が下がることが確認できました。

    例えば、

    上池袋一丁目

    • 65歳以上人口:809人
    • 健康遊具数:1基
    • 250m圏内人口割合:97.79%

    であり、

    健康遊具数だけを見ると不足しているように見えますが、

    実際にはほぼ全域が健康遊具の利用圏に含まれていました。

    一方、

    健康遊具利用圏のカバー率が低い町丁目では、

    優先的な整備候補として抽出されました。


    AIによる分析時間

    今回の分析では、

    • e-Statからの人口取得
    • ArcGIS Onlineからの遊具データ取得
    • 健康遊具抽出
    • 250m利用圏作成
    • 人口との空間結合
    • 優先順位計算
    • Webマップ作成

    までを実施しました。

    延べ処理時間は約25分でした。

    従来であれば、

    • 統計データ探索
    • CSV加工
    • GIS取り込み
    • バッファ作成
    • 空間集計
    • 主題図作成

    を手作業で行う必要があり、半日程度を要する作業です。

    また、今回の25分の多くはAIとGISが処理を実行している時間であり、職員が画面の前で操作し続ける時間ではありません。

    その間に、

    • メール対応
    • 提案書作成
    • 打ち合わせ準備

    など他の業務を進めることができます。


    自治体にとっての価値

    今回の分析は、

    単に地図を作ることが目的ではありません。

    本質は、

    「限られた予算をどこへ優先的に投入するか」

    を客観的に判断できることです。

    例えば、

    • 健康遊具
    • 遊具更新
    • 樹木管理
    • 公園施設更新

    などの分野に応用できます。

    経験や勘だけでなく、

    人口構成や利用圏を踏まえた説明可能な意思決定を支援できる点が大きな価値です。


    おわりに

    今回の実証では、

    生成AI
    ×
    e-Stat
    ×
    ArcGIS Online

    を組み合わせることで、

    高齢者人口と健康遊具配置をもとにした優先整備地区の抽出が可能であることを確認しました。

    これは単なるGIS分析の自動化ではなく、

    統計データと空間情報を活用した政策判断支援の第一歩と考えています。

    今後は、他市で進めている公園DXの取り組みにおいても、

    • 遊具
    • 樹木
    • 公園施設

    を対象に、

    人口構成や利用圏を考慮した維持管理・更新計画への活用を検討していきます。

    補足:なぜ「推測で人口値を作らない」と指示したのか

    今回の実証では、生成AIに対して

    「推測で人口値を作らないでください」(①のプロンプト注意)

    という指示を明示的に与えています。

    一見すると当たり前のように見えますが、これは自治体業務で生成AIを活用する上で非常に重要な意味を持っています。

    1. ハルシネーション(AIの誤生成)を防ぐため

    生成AIは、回答に必要な情報が不足している場合でも、もっともらしい内容を生成してしまうことがあります。

    例えば人口統計が取得できなかった場合、

    「この規模の自治体なら人口は約○万人だろう」

    と推測値を作成してしまう可能性があります。

    しかし、行政業務では推測値と実データは明確に区別しなければなりません。

    そのため本実証では、

    「データが取得できない場合は推測せず、その旨を報告する」

    というルールを設定しました。

    2. 行政で最も求められるのは正確性だから

    総務省の調査でも、自治体が生成AI活用において懸念している項目として、

    「AI生成物の正確性」

    が上位に挙げられています。

    今回の実証では、AI自身に数値を考えさせるのではなく、

    ・e-Stat API
    ・自治体公開データ
    ・ArcGIS Online

    などの実データを利用し、そのデータをもとに処理を行っています。

    つまり生成AIは「答えを作る」のではなく、

    「正しいデータを取得し、整理し、分析する」

    役割を担っています。

    3. 説明責任を確保するため

    自治体業務では、

    「なぜその結果になったのか」

    を説明できることが重要です。

    そのため本実証では、

    ・利用したデータソース
    ・統計年次
    ・対象項目
    ・分析条件

    を確認できる状態で処理を行っています。

    結果だけではなく、根拠まで追跡できることが行政利用の前提になります。

    4. EBPMの品質を維持するため

    今回の健康遊具の優先整備地区の抽出では、

    250m利用圏人口や高齢化率などの客観的な指標を利用しています。

    もし元となる人口値が推測値であれば、分析結果そのものの信頼性が失われます。

    限られた予算の中で整備優先順位を判断するためには、

    「正しいデータに基づいて分析すること」

    が不可欠です。

    まとめ

    生成AIは非常に強力なツールですが、自治体業務では「それらしい回答」よりも「正しい回答」が求められます。

    今回の実証で設定した

    「推測で人口値を作らない」

    というルールは、生成AIを行政実務で活用するための重要なガードレールです。

    今後は、生成AIに判断を任せるのではなく、

    ・公的データを取得する
    ・分析を実行する
    ・結果を説明可能な形で提示する

    という役割で活用することで、説明可能で信頼性の高い自治体DXにつながると考えています。

    ■ 関連記事

    ▶ 第1回:自治体GISとAIの融合
    ▶ 第2回:ArcGIS Onlineと生成AIを連携した人口統計分析の実証
    ▶ 第3回:生成AIとGISで健康遊具の優先整備地区を抽出してみた
    ▶第4回:自治体の人材不足はGIS AIで解決できるのか
    ▶第5回:e-Stat APIとGISを結合するときの落とし穴

  • ArcGIS Onlineと生成AIを連携した人口統計分析の実証

    【自治体GIS×生成AIシリーズ】

    本記事は、生成AIとGISを活用した自治体業務の実証シリーズの第2回です。
    関連記事

    ▶ 第1回:自治体GISとAIの融合
    ▶第3回:生成AIとGISで健康遊具の優先整備地区を抽出してみた
    ▶第4回:自治体の人材不足はGIS AIで解決できるのか
    ▶第5回:e-Stat APIとGISを結合するときの落とし穴

    自治体では人口統計や地域分析を行う際、
    統計データ収集やGIS登録に多くの時間を要します。

    具体的な作業

    従来は複数のWebサイトやシステムを操作して実施していた作業です。

    • 統計データを探す
    • CSVをダウンロードする
    • GISへ取り込む
    • 地図を作成する
    • 分析する

    そこで今回、

    生成AIエージェント(Codex CLI)とArcGIS Onlineを連携し、

    ・公開情報の調査
    ・統計データ取得
    ・GIS登録
    ・可視化

    までを自然言語で実行できるか検証しました。

    実際に入力した指示(プロンプト)

    プロンプト①

    大阪府和泉市の人口推移と高齢化率を取得してください

    プロンプト②

    人口と高齢化率をCSVで出力してください

    プロンプト③

    ArcGIS Onlineへアップロードして
    全国市区町村境界と自治体コードでJoinしてください

    プロンプト④

    2020年の高齢化率を色分けしたWebMapを作成してください

    AIが自動で行った処理

    今回、生成AIは次の処理を自動で実行しました。

    自治体名検索

    自治体コード取得

    e-Stat API接続

    人口データ取得

    高齢化率計算

    CSV作成

    ArcGIS Online登録

    市区町村境界とのJoin

    WebMap作成

    従来であれば複数のツールや専門知識が必要だった作業です。

    今回得られた結果

    今回の検証では、

    自治体人口高齢化率
    和泉市181,770人25.85%
    豊島区296,062人19.77%
    岡崎市378,698人23.68%
    大阪市2,654,227人25.50%

    を自動取得し、下図のとおりGIS上へ可視化できました。

    GISと生成AIの組み合わせが有効な理由

    生成AI単体では位置情報を扱うことは得意ではありません。

    一方GISは、

    • 位置
    • 面積
    • 距離
    • 圏域
    • 重ね合わせ

    を扱うことに優れています。

    今回の検証により、

    自然言語
    ↓
    生成AIエージェント
    ├ Playwright MCP
    ├ e-Stat API
    └ ArcGIS MCP
    ↓
    GIS

    を組み合わせることで、

    自然言語から空間分析へつなげられる可能性が見えてきました。

    具体的な処理内容

    Step1

    e-Stat統計ダッシュボードAPIから人口データ取得

    対象自治体

    • 豊島区
    • 和泉市
    • 岡崎市
    • 大阪市

    Step2

    高齢化率を自動計算

    取得した年齢3区分人口から

    65歳以上人口
    ÷
    総人口
    ×100

    で高齢化率を算出


    Step3

    ArcGIS Onlineへ自動登録

    生成AIがCSVを作成し、

    ArcGIS Onlineへアップロード


    Step4

    全国市区町村境界と自動Join

    自治体コード(JCODE)を利用し、

    境界データと統計データを結合

    今回見えてきた可能性

    今回の検証では、

    単に地図を作るだけではなく、

    生成AIが

    • 統計データを検索
    • APIを利用
    • GISへ登録
    • 地図化

    まで行うことを確認しました。


    【比較】実行時間の劇的な短縮

    今回実施した作業を、従来の手作業と比較してみます。

    作業内容従来AI活用
    e-Statで統計表を探す20~30分2分
    人口データ取得20分2分
    高齢化率計算10分1分
    CSV整形20分1分
    ArcGIS Online登録15分3分
    自治体境界とのJoin20分3分
    WebMap作成30分8分
    合計約2~3時間約20分

    今回の検証では、生成AIが統計データの取得からGISへの登録、地図作成までを一連の流れとして実行しました。

    従来であればGIS担当者や統計担当者が複数のツールを使い分け2~3時間程度を要します。一方、今回の検証では、自然言語による指示からWebマップ完成まで約20分で実行できました。

    ただし、この20分は職員が作業し続ける時間ではありません。

    生成AIが統計データ取得、CSV作成、GIS登録、Join、Webマップ作成を順次実行している時間であり、その間、職員は他の業務を進めることができます。

    つまり、単純な作業時間短縮だけでなく、「職員が手を離せる時間」が生まれる点に大きな効果があります。

    今後、対象データや分析パターンが増えるほど、この効果はさらに大きくなると考えられます。

    今回の検証で確認できたこと

    今回の実証では、単に人口統計を取得してGISへ登録しただけではありません。

    生成AI(Codex CLI)が複数のMCPサーバーやAPIと連携し、

    ・自治体ホームページの調査
    ・統計データの取得
    ・GISデータの更新
    ・地図化と可視化

    までを自然言語から実行できることを確認しました。

    これは、従来職員が複数のシステムを操作して行っていた業務を、AIエージェントが支援する新しい業務スタイルの可能性を示しています。

    ■ 業界動向

    2026年にはアジア航測やインフォマティクスも
    生成AIとGISを連携した取り組みを発表しています。

    今回の検証は、
    こうした流れを自治体業務へ適用できるかを
    確認するための実証でもあります。

    まとめと今後の展望

    今回の検証では、生成AIが統計データの取得からGISへの登録、地図作成までを一連の流れとして実行できることを確認しました。

    重要なのは単なる作業時間短縮ではなく、職員がデータ収集や加工に費やしていた時間を、分析や政策立案に振り向けられる可能性が見えてきたことです。

    今後は、

    ・高齢者施設の分布分析
    ・公園施設配置の検討
    ・防災情報の可視化
    ・インフラ管理業務

    などへの応用も期待されます。

    地域GIS研究所では、GIS・統計分析・AIを組み合わせた自治体業務への活用について、引き続き検証と研究を進めていきます。

    補足:ハルシネーションを防ぐために実際に行ったプロンプト設計

    生成AIを自治体業務へ適用する際、最も重要になるのが「ハルシネーション(もっともらしい誤情報)」への対策です。

    総務省の調査でも、自治体が生成AI導入において懸念している課題として「AI生成物の正確性」が上位に挙げられています。

    今回の実証では、生成AIに自由に回答させるのではなく、行政実務に耐えられるよう複数の制約条件を与えました。

    ① 推測による数値生成を禁止する

    まず最も重要な指示が、

    「推測で人口値を作らないでください」

    というルールです。

    統計値が取得できない場合にAIが推測値を生成してしまうと、その後の分析結果すべてが誤ったものになります。

    そのため、本実証では取得できない場合は推測せず、取得できなかった理由を報告するよう指示しています。

    ② 根拠となるデータを必ず明示する

    分析結果だけを出力させるのではなく、

    ・データソース
    ・統計年次
    ・使用フィールド
    ・結合キー

    を明記するよう指示しています。

    これにより、人間が後から検証できる状態を維持しています。

    自治体業務では結果だけではなく、「なぜその結果になったのか」を説明できることが重要です。

    ③ 利用するデータソースを限定する

    生成AIは学習データから回答を作成できますが、行政利用では公的統計を利用する必要があります。

    そのため、

    「e-Stat APIから取得すること」

    「自治体公開データを利用すること」

    など、利用するデータソースを明示的に指定しています。

    これにより、不明確なWeb情報や古い情報を参照するリスクを抑えています。

    ④ データ欠損時の対応を事前に定義する

    統計データが取得できないケースも存在します。

    その場合、

    「取得できなかった理由を明記する」

    「代替可能な統計を整理する」

    という対応を行うよう指示しています。

    AIに推測をさせるのではなく、人間が判断できる材料を提示させることを重視しています。

    ⑤ 既存GISデータの構造を確認させる

    ArcGIS Onlineを利用する場合、

    「レイヤを確認する」
    「フィールド構造を確認する」
    「既存データを検索する」

    という手順を先に実施しています。

    これにより存在しないフィールド名や誤った属性を前提とした処理を防止できます。

    MCPによる透明性の確保

    今回の実証では、生成AIだけに処理を任せているわけではありません。

    Codex CLIから、

    ・Playwright MCP
    ・e-Stat API
    ・ArcGIS MCP

    を利用し、必要なデータ取得や更新処理を実施しています。

    さらに、MCP Inspectorを利用することで、AIがどのデータを参照し、どの条件で検索したのかを確認できます。

    従来のジオプロセシング履歴と同様に、処理内容を追跡できることも重要な特徴です。

    補足のまとめ

    生成AIを自治体業務で活用するためには、AIに自由な回答を求めるのではなく、

    ・推測を禁止する
    ・根拠を明示する
    ・データソースを限定する
    ・検証可能な状態を維持する

    といったルール設計が不可欠です。

    今回の実証では、生成AIを「回答生成ツール」ではなく、「公的データを扱う業務支援ツール」として利用することで、説明可能で再現性のある分析が可能であることを確認できました。

    関連記事

    ▶ 第1回:自治体GISとAIの融合
    ▶ 第3回:生成AIとGISで健康遊具の優先整備地区を抽出してみた
    ▶第4回:自治体の人材不足はGIS AIで解決できるのか
    ▶第5回:e-Stat APIとGISを結合するときの落とし穴

  • 自治体GISとAIの融合

    【自治体GIS×生成AIシリーズ】~自然言語でGISデータを活用する時代へ~

    本記事は、生成AIとGISを活用した自治体業務の実証シリーズの第1回です。
    関連記事

    ▶第2回:ArcGIS Onlineと生成AIを連携した人口統計分析の実証
    ▶第3回:生成AIとGISで健康遊具の優先整備地区を抽出してみた
    ▶第4回:自治体の人材不足はGIS AIで解決できるのか
    ▶第5回:e-Stat APIとGISを結合するときの落とし穴

    はじめに

    自治体では近年、GIS(地理情報システム)の活用が進み、多くの業務で位置情報を活用したデータ整備が行われています。

    しかし実際には、

    • GISデータは整備されている
    • WebGISも導入されている
    • ダッシュボードも構築されている

    にもかかわらず、

    「GIS担当者しか使えない」

    という課題を抱える自治体は少なくありません。

    GISは本来、位置・空間・時間・属性を統合して分析できる強力な仕組みです。

    しかし、その活用には専門知識やGISソフトウェアの操作スキルが必要でした。

    今回、地域GIS研究所では ArcGIS Online と AI を連携し、自然言語によってGISデータを検索・分析・更新する検証を実施しました。

    対象は和泉市で整備を進めている「遊具マップPOC」です。

    検証の結果、従来はGIS担当者が実施していたデータ整備や分析業務を、自然言語によって実行できることを確認しました。


    今回の検証環境

    今回構築した仕組みは以下のとおりです。

    職員
    ↓
    自然言語
    ↓
    AI(Codex)
    ↓
    MCP Server
    ↓
    ArcGIS Online
    ↓
    WebMap・FeatureLayer

    MCP(Model Context Protocol)は、AIと外部システムを接続する仕組みです。

    これによりAIは、

    • ArcGIS Onlineの検索
    • レイヤ構造の確認
    • 属性更新
    • 空間分析

    を実行できるようになります。


    従来のGIS業務フロー

    遊具不足公園の抽出

    例えば、

    「人口が多いのに遊具が少ない公園を抽出する」

    という分析を行う場合、

    従来は以下の作業が必要でした。

    遊具レイヤ準備
    ↓
    遊具数集計
    ↓
    町丁目人口データ取得
    ↓
    空間結合
    ↓
    フィールド計算
    ↓
    集計
    ↓
    Excel出力
    ↓
    職員確認
    ↓
    ランキング作成

    GIS担当者が ArcGIS Pro を操作しながら実施する典型的な業務です。


    人口・世帯情報の付与

    公園ポリゴンへ人口・世帯を付与する場合は、

    公園ポリゴン
    ↓
    町名ポリゴン
    ↓
    Spatial Join
    ↓
    フィールド追加
    ↓
    フィールド計算
    ↓
    目視確認
    ↓
    エラー修正
    ↓
    更新

    が必要でした。

    表記ゆれや空間誤差がある場合は、職員が個別に確認する必要があります。


    市民問い合わせ対応

    例えば、

    「孫に逆上がりを教えたいので、近くに鉄棒のある公園はありますか?」

    という問い合わせがあった場合、

    遊具マップ(関連記事)の使用環境がある職員は

    遊具マップ起動
    ↓
    鉄棒を検索
    ↓
    対象公園確認
    ↓
    位置確認
    ↓
    電話回答

    という対応が可能です。

    従来の紙台帳やExcel管理と比較すると、大幅な効率化が図られています。

    しかし、この場合でも職員は、

    逆上がり

    鉄棒

    という関係を頭の中で判断する必要があります。

    また、

    高鉄棒
    低鉄棒
    健康鉄棒

    などの違いも理解した上で検索しなければなりません。


    AIとGISによる検証結果

    ① 公園遊具の検索

    AIに対して、

    「青葉台1号公園の遊具を調べて」

    と入力すると、

    • 遊具数
    • 遊具種別
    • 関連町丁目
    • 人口
    • 世帯数

    を自動で集計して回答しました。


    ② 人口・世帯の自動補完

    AIへ

    「和泉市_都市公園レイヤに人口と世帯のフィールドを追加して、和泉市_町名レイヤから転記して」

    と指示しました。

    結果は、

    • 対象公園数:342件
    • 空間照合成功:341件
    • 表記ゆれ補完:1件
    • 未転記:0件

    でした。

    さらに、

    府中町7丁目
    ↓
    府中町七丁目

    という表記ゆれも自動で判定し補完しました。


    ③ 公園ポリゴンへの人口付与

    次に、

    izumi_parkP ポリゴンレイヤに対して、

    人口・世帯を付与する作業を実施しました。

    結果は、

    • 対象:343件
    • 更新成功:343件
    • 未転記:0件
    • 複数町名にまたがる公園:79件

    でした。

    複数の町丁目にまたがる公園については、

    AIが

    公園ポリゴン
    ↓
    町名ポリゴン
    ↓
    重なり面積計算
    ↓
    最大面積の町名を採用

    という判断を行いました。

    これは従来であれば、ArcGIS Proの空間解析によって実施していた処理です。


    ④ 遊具不足公園の抽出

    さらに、

    「人口が多いのに遊具が少ない公園を抽出して」

    という自然文から、

    人口・世帯・遊具数・遊具種別を統合し、

    遊具整備優先度ランキングを作成しました。

    これは単なる検索ではなく、政策判断支援に近い分析です。


    市民の問い合わせにAIを活用した場合

    AIに対して、

    「孫に逆上がりを教えたい」

    と入力すると、

    AIは質問の意図を理解し、



    幼児・小学校低学年

    逆上がり

    低鉄棒

    と解釈します。

    さらに、

    • 鉄棒の有無
    • 公園の位置
    • 利用しやすさ

    などを考慮しながら候補公園を抽出できます。

    つまり、

    遊具の種類を検索する

    のではなく、

    市民がやりたいこと

    から適切な公園を探せるようになります。

    また、

    「3歳の子どもを遊ばせたい」

    という問い合わせに対しても、

    • 幼児用すべり台
    • スプリング遊具
    • 砂場

    などを持つ公園を抽出できます。

    これは遊具マップを市民自身が利用するだけでなく、

    職員による問い合わせ対応支援としても活用できます。


    GISとAIの組み合わせが生み出す価値

    GISは、

    どこに何があるか

    を管理する仕組みです。

    一方でAIは、

    何をしたいのか

    を理解できます。

    この二つを組み合わせることで、

    位置情報

    施設情報

    利用目的

    を結び付けた新しい行政サービスが可能になります。


    MCP Inspectorによる説明責任

    自治体業務では説明責任が重要です。

    今回の検証では MCP Inspector を活用し、

    • どのツールを実行したか
    • どのデータを参照したか
    • どのような更新を行ったか

    を確認しました。

    AIが処理を実行しても、

    その内容を追跡・検証できるため、

    自治体業務に求められる透明性を確保できます。


    GISとAIが変える自治体業務

    GISデータは、

    • 位置
    • 空間
    • 時間
    • 属性

    を持っています。

    AIは自然言語を理解します。

    この二つを組み合わせることで、

    これまでGIS担当者だけが実施していた業務を、

    より多くの職員が活用できる可能性があります。


    今後の可能性

    今回の検証は遊具管理を対象としましたが、

    同じ考え方は、

    • 樹木管理
    • 公園施設管理
    • 街路灯管理
    • 防災施設管理
    • 道路台帳管理
    • 人流分析

    などにも応用できます。

    将来的には、

    「人口が多いのに遊具が少ない地域は?」

    「D判定の樹木が多い公園は?」

    「高齢化が進む地域で健康遊具が不足している公園は?」

    といった問いに対し、

    位置・空間・時間・属性を持つGISデータを生成AIが理解し、

    職員が自然文で問い合わせるだけで分析結果を得られる時代が到来すると考えています。

    GISは専門職だけのツールから、組織全体の意思決定を支援する基盤へと進化していくでしょう。


    まとめ

    今回の検証では、

    GISデータ作成
    ↓
    データ整備
    ↓
    問い合わせ対応
    ↓
    政策判断

    までを自然言語で支援できる可能性を確認しました。

    これは単なるAIチャットではありません。

    位置・空間・時間・属性を持つGISデータを、誰もが自然文で活用できる世界への第一歩です。

    地域GIS研究所では、今後も自治体業務における AI × GIS の可能性を検証し、その成果を発信していきます。

    業界動向と今回の検証

    2026年5月には、アジア航測株式会社が生成AIエージェントを活用した行政向けGIS支援基盤「ALANDIS+GeAI(仮称)」を発表しました。

    また、2026年6月には、株式会社インフォマティクスが提供する防災GISサービス「GC Navi」において、生成AIによるチャット機能の提供を開始しています。

    このように、GISと生成AIを連携させる取り組みは、行政分野における新たな潮流となりつつあります。

    今回の検証では、ArcGIS Onlineと生成AIを連携し、

    ・GISデータの検索
    ・属性情報の更新
    ・空間分析の実行
    ・問い合わせ対応支援
    ・政策判断支援

    までを自然言語で実行できる可能性を確認しました。

    GISは、位置・空間・時間・属性を持つ自治体の重要なデータ基盤です。

    これまでGISは専門職が利用するシステムとして発展してきましたが、生成AIとの連携により、今後は職員が自然な文章でGISを活用できる環境へ発展していくことが期待されます。

    地域GIS研究所では、GIS・統計・AIを組み合わせた自治体業務への活用について、引き続き検証と研究を進めています。

    MCP Inspectorによる説明責任

    自治体業務では、

    • なぜその結果になったのか
    • どのデータを使ったのか
    • どのような処理を行ったのか

    を説明できることが重要です。

    今回の検証では、MCP Inspectorを利用してAIが実行したGIS処理を確認しました。

    例えば、

    AIへ

    「人口が多いのに遊具が少ない公園を抽出して」

    と指示した場合、AIは単に文章を生成しているわけではありません。

    実際にはArcGIS Online上のGISデータに対して検索処理を実行しています。


    AIが実際に実行した処理

    今回の例では、AIは以下の処理を行いました。

    ① 施設名レイヤ(Equipment_POC)を参照

    ② 人口1000人以上のレコードを抽出
    (JINKO >= 1000)

    ③ 人口順に並べ替え
    (JINKO DESC)

    ④ 公園名・遊具名・人口・世帯を取得

    ⑤ 結果を集計して回答

    MCP Inspectorで確認した実行内容

    実際にAIが実行した検索条件

    使用ツール
    query_layer_with_fields

    検索レイヤ
    Equipment_POC

    検索条件
    JINKO >= 1000

    並び順
    JINKO DESC

    取得項目
    公園名
    遊具名
    人口
    世帯
    町丁目

    下図 MCP Inspectorによる実行内容確認例

    (PCスクリーンショット)

    ①入力内容

    ②出力内容


    AIはブラックボックスではない

    今回の検証では、

    AIが

    人口1000人以上の遊具を抽出しました

    と回答しただけではありません。

    その裏側で、

    • どのレイヤを使ったのか
    • どの条件で検索したのか
    • どの結果を取得したのか

    まで確認できました。

    つまり、

    AIの回答

    実際のGIS処理

    を追跡できます。


    ArcGIS Proとの関係

    従来のGIS業務では、

    空間結合
    フィールド演算
    統計集計

    などの処理内容を、

    ArcGIS Proの「ジオプロセシング履歴」で確認していました。

    MCP Inspectorは、

    AIが実行したGIS処理について、

    どのツールを使ったか
    どのデータを参照したか
    どのような結果を返したか

    を確認できるため、

    AI時代の「ジオプロセシング履歴」や「監査ログ」に近い役割を果たします。

    関連記事

    ▶第2回:ArcGIS Onlineと生成AIを連携した人口統計分析の実証
    ▶第3回:生成AIとGISで健康遊具の優先整備地区を抽出してみた
    ▶第4回:自治体の人材不足はGIS AIで解決できるのか
    ▶第5回:e-Stat APIとGISを結合するときの落とし穴

  • 占用許可申請のオンライン化はなぜ進まないのか

    〜占用業務を“路線図”として捉えたSaaS型POCの実践〜

    自治体業務の中でも、占用許可申請のオンライン化は長年課題とされてきました。

    原因は単純で、
    申請だけオンライン化しても業務が完結しないからです。

    本記事では、既存システムを活かしながら実現した
    現実的なオンライン化モデル(POC)
    を紹介します。

    ■ 背景:なぜ占用許可申請はオンライン化できないのか

    現在の電子申請サービスでは、

    • 申請受付
    • 添付ファイル提出

    までは対応できます。

    しかし実際の業務では、

    • 審査
    • 納入
    • 許可書発行

    といった一連の流れが必要です。


    ◎ 問題はここです

    「申請の後の業務がつながらない」


    結果として、

    • メール
    • Excel
    • 個別システム

    が混在する運用になっています。

    ■ 自治体の制約:ネットワーク分離

    自治体のシステム環境は、

    • インターネット系
    • LGWAN系
    • 庁内系

    に分離されています。


    ◎ つまり

    外部サービスと庁内システムが直接つながらない


    これが、オンライン化が進まない本質です。

    占用業務を「ライフサイクル」で捉える

    占用許可は、一度の申請で終わるものではありません。下図にある**「占用ライフサイクルモデル」**が示す通り、業務は「誕生(新規申請)」「維持(納付更新)」「再生(継続更新)」という無限のループで構成されています。

    手続きの種類発生条件申請者の負担現地調査最終成果物
    新規申請未登録・新規要望重いあり新規許可書・起案書
    納付更新年度替わり軽い(納付のみ)なし納付更新リスト・調定表
    継続更新申請切れ中(書類提出)なし更新許可書

    このように、種類によって業務の重さも成果物も異なります。これら全てを一つのシステムで強引に置き換えるのではなく、それぞれのプロセスの「合流地点」をいかにつなぐかが重要です。

    占用業務を複雑にしているのは、申請者、占用担当者、そしてシステムや金融機関という異なるアクター(路線)が複雑に絡み合う点にあります。

    「路線図」で可視化する業務のボトルネック

    例えば、新規申請フェーズでは現地調査や適不適の確認を経て「起案書」が作成されますが、継続申請においても起案以降は全く同じ**「共通収納レール」**へと合流します。 このプロセスを「路線図」として可視化することで、どこでデータが滞留しているのか、どの「駅(書類)」で手作業が発生しているのかが明確になります。

    さらに、未申請者への「催告状」や未納者への「督促状」といった、例外処理(セーフティネット)までを設計に組み込むことで、初めて実務が完結します。

    業務プロセス全体を「路線図」で俯瞰したことで、下図のとおりRPAやポータル化によって優先的に自動化すべき**「アナログ・タッチポイント」**が特定されました。

    • Target 1「発送」のデジタル化: ポータルサイトを通じたデジタル配信により、紙の郵送コストと封入作業を削減。
    • Target 2「振込確認」の自動化: 金融機関とのAPI連携により、消し込み作業を自動化。
    • Target 3「窓口・多重入力」の排除: e-Gov連携によるオンライン申請を庁内システムと直結。

    占用業務は、
    単一の手続きではなく、

    「申請 → 審査 → 納入 → 許可 → 維持更新」

    という連続した業務フローです。

    ■ 解決アプローチ:「流れ」を分断しない

    今回のPOCでは、

    単一システムではなく、組み合わせで解決

    しています。

    ■ 構成

    • 申請受付:オンラインフォーム
    • ワークフロー:自動連携処理
    • データ管理:業務データ基盤
    • 庁内処理:既存業務システム

    ◎ ポイント

    「置き換えない」こと

    ■ POCで実現した業務フロー

    今回の特徴は、「段階的な処理」を実現している点です。

    今回の特徴は
    段階的な処理です


    ■ 主な流れ

    1. オンライン申請(位置情報付き)
    2. 受付通知(自動)
    3. 担当者による審査
    4. 承認・却下
    5. 請求書送付
    6. 入金確認
    7. 許可書発行

    ◎ これらを

    • メール通知
    • ステータス更新
    • 自動連携

    でつないでいます。

    ■ ポイント:既存システムを捨てない

    今回の一番重要な考え方です。


    ■ 結論

    既存システムはそのまま使う


    • 庁内業務システム
    • データベース

    は変更せず、

    外側に仕組みを追加します。


    ■ なぜ重要か

    これにより、

    • 予算制約
    • ベンダーロック
    • 運用負荷

    を最小化できます。

    システム連携の実態

    本モデルでは、

    メールを使ったデータ連携

    を採用しています。


    ■ 仕組み

    • 外部 → CSV送信
    • 庁内 → メール受信
    • 自動でデータ登録

    ◎ これにより

    ネットワーク分離を突破

    しています。

    ■ 今後の展開:自治体DXの現実解

    このモデルは、

    • 道路占用
    • 公園占用
    • 公園使用
    • 各種申請

    に横展開可能です。


    ◎ 特に重要なのは

    「つなぐ設計」

    です。

    ■ まとめ

    占用許可申請のオンライン化は、

    単なるデジタル化ではなく
    業務プロセスの再設計です。


    今回のPOCでは、

    • 強靭化環境でも実現可能
    • 既存システムを活用
    • 段階的に導入可能

    という現実解を示しました。

    ■ 最後に

    自治体DXは、

    ◎ 「システム導入」だけではなく
    「組み合わせ設計」

    も含めて進めるべきです。

    ■ ご相談について

    占用許可申請のオンライン化や、
    既存システムを活かした業務改善については、

    ・現状の課題整理
    ・小規模な実証(POC)
    ・段階的な導入検討

    から対応可能です。

    まずはお気軽にご相談ください。

  • 自治体DXを阻む4つの構造と解決方法

    ~ データ活用の本質と地域GIS研究所のアプローチ ~

    自治体DXを進めるうえで重要なのは、
    単にシステムを導入することではなく、

    自治体特有の業務文化を理解したうえで進めることです。

    自治体には、長年の運用の中で蓄積された

    ・台帳データ(例:固定資産課税台帳、道路台帳、公園・樹木台帳)
    ・空間情報(地図・施設)
    ・業務履歴(点検・申請・苦情)

    といった、極めて価値の高いデータ資産が存在しています。

    しかし現実には、それらが十分に活用されていません。


    ■ 自治体DXの本質と課題

    このように、自治体に存在する様々なデータは
    GISによって統合され、分析・可視化を経て、
    最終的に政策判断へとつながります。

    本来、自治体が持つデータは

    「現場 × 位置 × 時間」

    をすべて持つ、非常に強力な資産です。

    例えば

    ・樹木台帳 → 空間+履歴
    ・人流データ → 時間変化
    ・道路・施設 → 位置情報

    これらを統合すれば、

    「見える化」ではなく「意思決定の根拠」になります

    しかし現実には、こうしたデータが存在していても、
    十分に活用されていないのが実情です。

    その背景には、自治体特有の組織構造があります。


    ■ DXを阻む4つの構造的課題

    自治体DXが進まない背景には、以下の構造的課題があります。


    ① 縦割りによる弊害

    ・部署ごとにデータが分断
    ・同じ情報を重複管理
    ・横断的な意思決定ができない

    ☑ 結果:全体最適ではなく部分最適


    ② 前例踏襲主義の弊害

    ・「今まで通り」が優先される
    ・データ活用の新しい試みが進まない
    ・改善よりも維持が目的化

    ☑ 結果:変化に弱い組織


    ③ 予算主義による財政の硬直化

    ・単年度予算での最適化
    ・投資対効果ではなく「使い切り」
    ・システム更新が断片的

    ☑ 結果:全体設計ができない


    ④ 上意下達の組織の弊害

    ・現場の知見が政策に反映されない
    ・データが意思決定に使われない
    ・判断が経験依存

    ☑ 結果:EBPMが機能しない

    これらの課題により、
    データがあっても「判断」に使われない状況が生まれています。


    ■ 自治体データの本来の価値

    自治体が持つデータは、単なる記録ではありません。

    政策判断のための基盤となる資産です

    しかし、

    ・分散している
    ・活用されていない
    ・蓄積されていない

    といった理由により、その価値が十分に発揮されていません。

    こうした課題を解決するためには、

    単にデータを集めるだけではなく、
    「現場・位置・時間」を持つデータを統合し、
    分析から意思決定までを一体で回す仕組みが必要です。

    以下は、その具体的な運用イメージです。

    このように、現場データを起点として、
    データの統合・可視化・分析・意思決定までを一体で回すことで、従来分断されていた業務をつなぎ、
    データに基づく政策判断(EBPM)を実現することができます。


    ■ DX化の正しい進め方

    地域GIS研究所では、こうした仕組みを実現するために、
    DXを以下のステップで進めます。


    ① データをつなぐ(統合)

    ・GISによる空間統合
    ・Excel・CAD・台帳の一元化

    ✅ 縦割りの解消


    ② 見える化する(可視化)

    ・ダッシュボード
    ・マップ表示

    ✅ 現場と管理の共通認識を形成


    ③ 分析する(理解)

    ・時系列分析
    ・リスク分析
    ・パターン抽出

    ✅ 前例依存から脱却


    ④ 判断に使う(EBPM)

    ・KPI化
    ・優先順位付け
    ・施策検討

    ✅ 上意下達から脱却


    ⑤ 運用に組み込む(定着)

    ・日常業務への組み込み
    ・継続的なデータ更新

    ✅ 予算主義から脱却


    ■ 地域GIS研究所の存在意義

    地域GIS研究所の役割は、

    単なるシステム導入ではありません


    ■ 強み

    ① 自治体35年の現場理解

    机上ではなく、実務に基づいた支援


    ② GIS × 統計 × AIの統合

    技術を「使える形」に落とし込む


    ③ 業務フローから設計

    システムではなく「業務を変える」


    ④ 小さく始めて広げる設計

    PoCから横展開へ


    ■ まとめ

    自治体DXの本質は、

    「データを使うこと」ではなく
    「データで判断すること」

    です。


    そしてそれを実現するためには、

    自治体の文化を理解し、
    現場・データ・政策をつなぐことが不可欠です。


    地域GIS研究所は、

    現場経験 × GIS × 統計 × AI

    を組み合わせ、

    自治体におけるデータ活用と意思決定の高度化を支援します。


    ■ 活用をご検討の方へ

    自治体DXの導入やデータ活用について、

    ・自自治体で活用できるか知りたい
    ・どこから始めるべきか相談したい
    ・具体的な導入イメージを検討したい

    など、お気軽にご相談ください。


    ▶ お問い合わせはこちらです。

  • 豊島区における防犯・危機管理DXの可能性

    〜IOTカメラ × AI分析と人流データで実現する新しい行政施策〜

    豊島区において、防犯・危機管理の高度化に向けた新たな取り組みとして、AIカメラとデータ分析を活用した実証的な検討を行いました。

    従来の防犯カメラは「記録」が中心でしたが、本提案では「分析・予測・通知」までを一体化し、行政判断に活用することを目的としています。

    本記事では、実証分析から得られた具体的な知見と、今後の行政施策への展開可能性について解説します。

    ■ 背景:防犯カメラは“見るだけ”から“活用する”時代へ

    従来の防犯カメラ運用では、

    ・映像の確認は事後対応
    ・データとしての活用はほぼ無し
    ・現場判断は経験頼み

    という課題がありました。

    本提案ではこれを、

    「データに基づく危機管理(EBPM)」へ転換

    することを目的としています。

    ※交通分析においても、時間帯ごとの相関分析により「リスク時間帯」や「重点配置」が明確化できることが確認されています。

    ■ 提案概要:IOTカメラ × AI分析×GIS

    本提案では、IoTクラウド型カメラを活用し、以下の構成で実現します。

    ■ システム構成

    ・カメラでスナップショット取得(10分間隔)
    ・AIで人物・車両を自動検出
    ・ArcGISでデータ蓄積・可視化
    ・異常値を自動検知し通知

    ■ 特徴

    ・動画ではなく静止画 → データ量が少ない
    ・クラウド管理 → 現場負担なし
    ・AI解析 → 人手不要

    ■ ① 人流・交通量の可視化

    ※交差点ごとの人流・交通量をリアルタイムに可視化

    ・15分単位で通行量を取得
    ・交差点ごとのランキング化
    ・時間帯別の変化を把握

    「どこが危ないか」が定量化

    実証結果では、
    西口五差路交差点やとげぬき地蔵入口交差点は通行量・変動ともに高く、
    都市の主要動線であることが明確に把握されました

    ■ ② 異常検知(ここがDXの本質)

    ・通常のパターンをAIが学習
    ・逸脱(±2σ〜3σ)を検知
    ・メールで即時通知

    異常は「リアルタイムで検知され、即時対応が可能」

    ・急激な人流増加
    ・事故・イベント
    ・突発的混雑

    実際の分析でも、
    残差分布は正規分布に近く、±2σを超える値を「異常」として定義可能であることが確認されています。

    異常は「予測できる現象」へ変わる

    ■ ③ 交差点リスクの可視化

    ・歩行者 × 車両の交錯リスク
    ・時間帯別の危険度
    ・優先対策地点の抽出

    交差点ごとの危険な時間帯を可視化

    ※曜日・時間帯ごとの異常発生を可視化しています。
    特に赤・紫は異常発生が多く、重点対策が必要な時間帯

    時間帯によって人流・車両流のピークが異なる


    「どこに人員を配置すべきか」が明確

    特に、
    西口五差路やとげぬき地蔵入口では

    ・昼間(10〜16時)
    ・夕方(16〜23時)

    に交錯リスクが最大となることが確認されています

    ■ 分析から見えた重要な示唆

    ■ 時間帯別の特徴

    ・朝 → 車両ピーク(通勤)
    ・昼 → 歩行者増加(生活・観光)
    ・夕方 → 交錯リスク最大

    時間帯で対策が全く違う

    ■ 交差点のタイプ分類

    交差点ごとに危険の特性が異なることが分かります。

    実証では交差点は大きく3タイプに分類されました。

    ① 歩行者中心(商業・観光)
    ② 車両中心(幹線道路)
    ③ 混合型(最も危険)

    一律対策ではなく「タイプ別対策」が必要

    ■ 異常発生の特徴

    ・曜日・時間帯に偏りあり
    ・特定地点で集中
    ・イベントや外部要因の影響

    例:
    ・日曜昼に混雑集中
    ・平日夕方にピーク
    ・特定曜日のみ異常発生

    危険は「偶然」ではなく「パターン」

    ■ 行政施策への活用

    本データは単なる分析ではなく、以下に直結します。

    ■ 交通安全

    ・歩車分離信号の導入
    ・横断歩道の最適配置
    ・時間帯別交通規制

    ■ 防犯対策

    ・夜間人流の把握
    ・カメラ配置最適化
    ・異常時の即時対応

    ■ 都市政策

    ・人流に基づく街づくり
    ・観光・イベント対策
    ・リソース最適配分

    「感覚」から「データへ」

    ■ KPIで管理できる行政へ

    本提案では以下をKPIとして設定可能です。

    ・通行量可視化率
    ・異常検知件数
    ・防犯カメラ稼働率
    ・通学路危険箇所数
    ・夜間人流把握率

    成果が数値で説明できる行政へ

    ■ まとめ

    本提案の本質は、

    「カメラ」ではなく「データ活用基盤」

    ・見る → 分析
    ・分析 → 予測
    ・予測 → 行動

    行政DXはここまで進んでいます。

    そして本取り組みは、

    現在は実証段階(PoC)ですが、

    ・交通安全
    ・防犯
    ・都市政策

    すべてに展開可能な基盤として、
    今後の自治体運営に大きな可能性を持っています。


    本内容は、トップページで紹介している
    「AIカメラ×GISによる都市分析」の実証事例です。

    ■ 活用をご検討の方へ

    本手法は、交通安全、防災、都市政策など幅広い分野に適用可能です。

    ・自自治体で活用できるか知りたい
    ・導入イメージを相談したい
    ・データ分析の可能性を検討したい

    など、お気軽にご相談ください。

    ▶お問い合わせはこちら

  • 樹木管理システムとは|AI・ArcGISによる樹木点検DXと履歴管理

    公園や街路樹の管理は、自治体にとって重要な業務の一つです。

    しかし現場では、

    ・現地調査に時間がかかる
    ・点検履歴の管理が煩雑
    ・報告書作成の負担が大きい

    といった課題が存在しています。

    本記事では、GISとAIを活用した樹木管理DXについて、
    実際の検証結果をもとに解説します。

    従来の樹木管理の課題

    • 樹木を1本ずつ現地で確認
    • 紙やExcelでの台帳管理
    • 点検履歴の蓄積が困難
    • 危険木の優先順位が曖昧
    • 報告書作成に多大な時間

    これらの課題により、
    「調査・記録」に多くの時間が割かれ、
    本来重要な「判断」に時間を使えない状況が発生しています。

    ArcGISによる樹木管理とは

    「1対多のリレーションシップ」が実現する継続的な履歴管理

    公共施設点検全般において、個別の地物(樹木)と点検履歴を正しく結びつけるには、「1対多(1:N)」のリレーションシップを構築することが不可欠です。本アプリでは、このリレーションを自動で構築する仕組みを備えています。

    このデータ構造により、現場での業務は以下のように進化します。

    • 過去の履歴を現場で即座に確認: モバイル端末の画面上で、前回の点検結果や写真、コメントを確認しながら、今回の点検内容を入力できます。
    • 対象物の誤認防止: 過去データと照合しながら調査することで、対象木の特定ミスや情報の断絶を防ぎ、データの連続性を担保します。
    • 「点検の積み重ね」を資産に: 1本の樹木に対して点検履歴が時系列で蓄積されるため、単発の調査で終わらず、継続的な「履歴管理」が可能になります。

    AI×GISによる樹木管理DX

    当社では、自治体での公園管理業務や街路樹管理業務において、ArcGISを活用した樹木管理基盤の整備を進めてきました。

    さらにGISとモバイル入力に加え、
    航空写真とAIを活用した樹木抽出技術を組み合わせることで、
    樹木管理業務の抜本的な効率化を実現しています。

    ■ 樹木抽出AIの仕組み

    高解像度航空写真を使用

    • AIが樹冠単位で自動検出
    • GIS上で本数・密度を集計
    • 分布を可視化

    ■ 検証結果(黒鳥山公園)

    • 対象面積:約30ha
    • 抽出本数:約1,800本
    • 密度:約60本/ha

    密度・分布ともに実際の公園環境と整合しており、
    実務で活用可能な精度レベルに到達していることを確認しました。

    ■ 使用データと精度の考え方

    本検証では、ESRIが提供する衛星画像(高解像度)を使用し、
    TIF形式に変換したデータをもとに解析を行いました。

    現時点ではAI抽出結果と現地調査との突合検証は未実施ですが、

    ・密度が現実的
    ・分布が自然
    ・過検出傾向の把握が可能

    であることから、

    全体把握・計画検討用途としては十分実用レベルにあると評価しています。

    また、自治体が保有する航空写真(オルソ画像)を使用することで、 さらに高精度な樹木台帳の作成が可能になります。

    業務の変化(最も重要)

    従来の樹木管理は、

    ◎ 現地で台帳を作るという流れでした。

    一方で本手法では、

    AIで台帳を作成し、現地で確認するという運用へ転換します。

    これにより、

    「調査する業務」から「判断する業務」へシフトすることが可能になります。

    現地入力の考え方を変えると、業務は劇的に変わる

    従来の樹木調査では、1本ずつ現地で位置を確定し、すべての入力項目を手作業で登録する必要がありました。

    しかしこの方法は、調査精度は高い一方で、入力負担が大きく、作業時間が増大するという課題があります。

    本取り組みでは、発想を転換し、

    「最初から正確に入力する」のではなく、「全体を俯瞰しながら効率的に補正する」運用を採用しています。

    ■ 効率的な現地入力の流れ

    • AIで作成した樹木台帳をベースとして表示
    • 現地では近い樹木を選択
    • 位置をマップ上で微調整
    • 必要な項目のみ入力
    • 存在しない場合のみ新規ポイント追加

    の方法により、

    ゼロから入力する作業を大幅に削減することが可能になります。

    ■ 従来手法との違い

    【従来】

    • 位置を1本ずつ新規作成
    • 全項目を毎回入力
    • 現地作業時間が長い

    【本手法】

    • 既存データを選択して修正
    • 必要な項目のみ入力
    • 現地作業時間を大幅短縮

    つまり「作る作業」から「確認する作業」への転換です。

    全体を俯瞰しながら入力するか、1本ずつゼロから入力するかで、
    作業時間には大きな差が生まれます。
    この差は単なる効率化ではなく、

    調査コスト・人的負担・継続運用の可否を左右する重要な要素です。

    精度と効率を両立する「ハイブリッド台帳生成」の考え方

    樹木台帳を整備する際、全ての箇所に同じ手法を適用するのではなく、資料の有無や求められる精度に応じて以下の2つのアプローチを組み合わせる「ハイブリッド手法」が最も現実的かつ効果的です。

    1. 既存図面の幾何補正による「高精度台帳」の作成
    過去の植栽図や設計図書が残っている場合、それらをArcGIS等で幾何補正し、GISデータとして樹木ポイントと属性を構築します。

    • メリット: 過去の植栽記録に基づいた極めて正確な台帳図が作成できます。
    • 課題: 補正作業や属性の紐付けに相応の工数を要するため、初期の経費が増大する傾向があります。

    2. AI樹幹抽出による「効率的・ラフデータ」の作成
    図面が存在しない、あるいは広範囲を迅速に把握したい場合には、航空写真からAIで樹冠を抽出します。

    • メリット: ラフなGISデータをあらかじめ作成しておくことで、現地では「ゼロから入力」するのではなく「既存データとの突合・微調整」だけで済み、劇的な効率化に繋がります。
    • 課題: 精度は航空写真の解像度に依存するため、位置の微修正を前提とした運用となります。

    ■ 「ハイブリッド」がもたらす運用の最適化

    これら2つを組み合わせることで、「AIだけでは不十分」「図面整理だけでは高コスト」という双方の弱点を補い、実務に即した台帳が成立します。

    このハイブリッド手法で整備された台帳をベースに、前述の**「1対多(1:N)のリレーションシップ」**を組み込むことで、正確な位置情報に基づいた継続的な点検履歴の管理が可能になります。①正確な地図(図面由来)
    効率的な全体把握(AI由来)
    が共存して初めて、現場で迷わない、データに基づく意思決定(EBPM)の基盤が完成するのです。

    樹木台帳の作成においては、AIによる抽出だけに依存するのではなく、既存の図面データと組み合わせることで、精度と実用性を大きく向上させることができます。

    当社では、在職中に公園の植栽図を活用し、
    CAD・TIF・Excelで管理されていた図面データに対して、
    ArcGISによる幾何補正を行い、公園樹木基盤データを整備してきました。

    今回のAIによる樹木抽出と、これらの既存図面データを併用することで、

    ・AIによる広範囲の自動抽出(網羅性)
    ・図面データによる位置精度の補完(精度)

    を両立することが可能になります。

    すなわち、 AIだけでは不十分、 図面だけでも不十分、 両者を統合することで初めて、実務で使える樹木台帳が成立します。

    国交省指針に準拠した「マトリックス判定」の導入

    樹木点検の質を左右するのは、判定の客観性と再現性です。本システムでは、従来の合計点数によるランク付け(点数評価)から脱却し、**国土交通省の点検指針に基づいた「マトリックス判定」**を基本構造として採用しています。

    • 外観評価(A〜D)× 活力度(1〜4)の組み合わせ: 樹体の損傷や腐朽といった「外観」と、葉量や樹勢などの「活力」を独立して評価し、その掛け合わせで最終的な「総合判定」を自動算出します。
    • 判断の揺らぎを防止: 各評価には具体的な状態説明(例:大きな腐朽や幹の割れがあれば即D判定など)が付加されており、誰が入力しても同一の基準で評価できる仕組みを構築しています。
    • 説明責任の確保: 「なぜこの判定になったのか」が国交省の基準に照らして明確に示されるため、住民や関係者への説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことが容易になります。

    ■ 指針に適合しつつ、自治体独自のニーズを実装できる「汎用性」

    本システムの最大の特徴は、国交省の標準的な枠組みを維持しながら、自治体ごとの固有課題に応じた判断基準を柔軟に実装できる点にあります。

    例えば、和泉市での運用事例では、国交省の基本項目に加えて以下の要素を統合しています。

    • 独自調査項目の追加: 特定の外来生物(クビアカツヤカミキリなど)による被害調査項目の実装。
    • 管理用リスクの設定: 現場判断に直結する独自の「管理用リスク(高・中・低)」の定義。

    このように、国の指針という「確かな土台」の上に、地域の特性や管理方針という「独自の基準」を重ね合わせることで、どの自治体でもすぐに実務に投入できる汎用性の高いシステムを実現しました。

    本仕組みは、単なる調査アプリではなく、自治体向けの「樹木管理システム」として継続運用できる構成を前提としています。

    導入効果

    • 調査時間の大幅削減(数日 → 数時間)
    • コスト削減(約50~70%)
    • 点検履歴の一元管理
    • 危険木の優先順位付け
    • 報告書作成の自動化

    活用イメージ

    • 樹木台帳と点検履歴の統合管理
    • 危険木の優先順位付け
    • 剪定・伐採判断の支援
    • 長寿命化計画への活用
    • 月報作成の自動化

    今後の展開

    • 他公園への展開
    • 年次更新による変化検知
    • 低木除去フィルタによる精度向上
    • GISダッシュボードとの連携

    まとめ

    AIとGISを組み合わせることで、
    樹木管理は単なる「調査業務」から、

    データに基づく意思決定(EBPM)を支える業務へ進化します。

    今後は、

    ◎ 「現地で作る台帳」から「AIで作る台帳へ」

    という流れが主流になっていくと考えられます。

    ■樹木管理DX:よくある質問(FAQ)

    Q. ArcGISで樹木管理はできますか?

    A. 可能です。Webマップ、モバイル点検、履歴管理、ダッシュボード分析まで一元管理できます。

    Q. AIだけで樹木診断はできますか?

    A. 現時点ではAI単独ではなく、職員・専門技術者とのハイブリッド運用が現実的です。※東京都では写真からのAI点検の実証実験が行われています。

    Q. 過去のCAD図面や植栽図は活用できますか?

    A. ArcGISによる幾何補正(ジオリファレンス)を行うことで、既存資産をGISデータとして再活用可能です。

    Q. 「ハイブリッド台帳生成」とは、具体的にどのような作業ですか?

    A. 既存の**「植栽図(紙・CAD)」の幾何補正と、「AIによる自動抽出」**を組み合わせる手法です,。

    • 図面がある箇所は、GIS上で位置を正確に補正し、過去の樹種属性を引き継ぎます(高精度)。
    • 図面がない、あるいは最新の状態ではない箇所は、航空写真からAIが樹木を自動で抽出します(高効率),。 これにより、「精度」と「コスト」の最適なバランスを実現します。

    Q. 既存の図面が全くない場合でも導入できますか?

    A. はい、可能です。 航空写真(オルソ画像)があれば、AIが樹冠を自動検出し、ラフなGISデータを先行して作成します,。現場ではゼロから入力するのではなく、AIが作ったデータを「確認・修正」するだけで済むため、従来の現地調査に比べ作業時間を大幅に短縮できます,。

    Q. 「1対多のリレーションシップ」による管理とは何ですか?

    A. 1本の樹木(地物)に対して、過去から現在までの複数の点検履歴を紐付けて管理する構造のことです。 従来の「その場限りの点検」とは異なり、現場の端末で「前回の判定はDだったから、今回は特に腐朽を確認しよう」といった継続的な経過観察が可能になります。これにより、対象物の誤認を防ぎ、データの連続性を担保できます。

    Q. 国土交通省の指針には対応していますか?

    A. 完全に準拠しています。 国交省の樹木点検指針に基づく「外観評価×活力度」のマトリックス判定をシステムに実装しています。客観的な基準で判定を自動算出するため、調査員のスキルによるバラツキを抑え、住民への説明責任(アカウンタビリティ)を果たせるデータを作成できます。

    Q. 自治体独自の調査項目(例:特定の害虫被害など)を追加できますか?

    A. 柔軟に追加可能です。 国の指針という「標準」をベースにしつつ、自治体独自の管理項目(例:クビアカツヤカミキリの被害確認、独自の管理リスク設定など)を組み込める汎用性の高い設計となっています。地域の特性に合わせた最適な管理体制を構築できます。

    Q. 導入によって、どの程度のコスト削減が見込めますか?

    A. 検証の結果、従来の「現地でゼロから台帳を作る」手法と比較して、調査コストを約50〜70%削減できることが確認されています。 報告書作成も自動化されるため、職員の事務負担も劇的に軽減されます,。

    ■自治体向け樹木管理DXのご相談について

    地域GIS研究所では、

    • 公園樹木台帳整備
    • ArcGIS導入支援
    • 樹木点検DX
    • AI活用検証
    • 樹木管理システム設計

    など、自治体業務に合わせた支援を行っています。

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