樹木管理はここまで変わる|AI×GISによるインフラ調査DX

公園や街路樹の管理は、自治体にとって重要な業務の一つです。

しかし現場では、

・現地調査に時間がかかる
・点検履歴の管理が煩雑
・報告書作成の負担が大きい

といった課題が存在しています。

本記事では、GISとAIを活用した樹木管理DXについて、
実際の検証結果をもとに解説します。

従来の樹木管理の課題

  • 樹木を1本ずつ現地で確認
  • 紙やExcelでの台帳管理
  • 点検履歴の蓄積が困難
  • 危険木の優先順位が曖昧
  • 報告書作成に多大な時間

これらの課題により、
「調査・記録」に多くの時間が割かれ、
本来重要な「判断」に時間を使えない状況が発生しています。

AI×GISによる樹木管理DX

当社では、GISとモバイル入力に加え、
航空写真とAIを活用した樹木抽出技術を組み合わせることで、
樹木管理業務の抜本的な効率化を実現しています。

■ 樹木抽出AIの仕組み

高解像度航空写真を使用

  • AIが樹冠単位で自動検出
  • GIS上で本数・密度を集計
  • 分布を可視化

■ 検証結果(黒鳥山公園)

  • 対象面積:約30ha
  • 抽出本数:約1,800本
  • 密度:約60本/ha

密度・分布ともに実際の公園環境と整合しており、
実務で活用可能な精度レベルに到達していることを確認しました。

■ 使用データと精度の考え方

本検証では、ESRIが提供する衛星画像(高解像度)を使用し、
TIF形式に変換したデータをもとに解析を行いました。

現時点ではAI抽出結果と現地調査との突合検証は未実施ですが、

・密度が現実的
・分布が自然
・過検出傾向の把握が可能

であることから、

全体把握・計画検討用途としては十分実用レベルにあると評価しています。

また、自治体が保有する航空写真(オルソ画像)を使用することで、 さらに高精度な樹木台帳の作成が可能になります。

業務の変化(最も重要)

従来の樹木管理は、

◎ 現地で台帳を作る

という流れでした。

一方で本手法では、

AIで台帳を作成し、現地で確認する

という運用へ転換します。

これにより、

「調査する業務」から「判断する業務」へシフト

することが可能になります。

現地入力の考え方を変えると、業務は劇的に変わる

従来の樹木調査では、
1本ずつ現地で位置を確定し、すべての入力項目を手作業で登録する必要がありました。

しかしこの方法は、
調査精度は高い一方で、入力負担が大きく、作業時間が増大するという課題があります。

本取り組みでは、発想を転換し、

「最初から正確に入力する」のではなく、
「全体を俯瞰しながら効率的に補正する」運用

を採用しています。

■ 効率的な現地入力の流れ

  • AIで作成した樹木台帳をベースとして表示
  • 現地では近い樹木を選択
  • 位置をマップ上で微調整
  • 必要な項目のみ入力
  • 存在しない場合のみ新規ポイント追加

の方法により、

ゼロから入力する作業を大幅に削減

することが可能になります。

■ 従来手法との違い

【従来】

  • 位置を1本ずつ新規作成
  • 全項目を毎回入力
  • 現地作業時間が長い

【本手法】

  • 既存データを選択して修正
  • 必要な項目のみ入力
  • 現地作業時間を大幅短縮

「作る作業」から「確認する作業」へ転換

全体を俯瞰しながら入力するか、
1本ずつゼロから入力するかで、
作業時間には大きな差が生まれます。

この差は単なる効率化ではなく、

調査コスト・人的負担・継続運用の可否を左右する重要な要素です。

■AI+既存図面によるハイブリッド台帳生成

樹木台帳の作成においては、AIによる抽出だけに依存するのではなく、
既存の図面データと組み合わせることで、精度と実用性を大きく向上させることができます。

当社では、在職中に公園の植栽図を活用し、
CAD・TIF・Excelで管理されていた図面データに対して、
ArcGISによる幾何補正を行い、公園樹木基盤データを整備してきました。

今回のAIによる樹木抽出と、これらの既存図面データを併用することで、

・AIによる広範囲の自動抽出(網羅性)
・図面データによる位置精度の補完(精度)

を両立することが可能になります。

すなわち、

◎ AIだけでは不十分
◎ 図面だけでも不十分

◎ 両者を統合することで初めて、実務で使える樹木台帳が成立します。

導入効果

  • 調査時間の大幅削減(数日 → 数時間)
  • コスト削減(約50~80%)
  • 点検履歴の一元管理
  • 危険木の優先順位付け
  • 報告書作成の自動化

活用イメージ

  • 樹木台帳と点検履歴の統合管理
  • 危険木の優先順位付け
  • 剪定・伐採判断の支援
  • 長寿命化計画への活用
  • 月報作成の自動化

今後の展開

  • 他公園への展開
  • 年次更新による変化検知
  • 低木除去フィルタによる精度向上
  • GISダッシュボードとの連携

まとめ

AIとGISを組み合わせることで、
樹木管理は単なる「調査業務」から、

データに基づく意思決定(EBPM)を支える業務へ進化します。

今後は、

◎ 「現地で作る台帳」から「AIで作る台帳へ」

という流れが主流になっていくと考えられます。

▶樹木調査・点検についての詳しい説明はこちらで解説しています。

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