【自治体GIS×生成AIシリーズ】~総務省調査と実証結果から考える次世代の自治体業務~
本記事は、生成AIとGISを活用した自治体業務の実証シリーズの第4回です。
はじめに
総務省が公表した「自治体における生成AI導入状況(令和7年6月30日版)」によると、生成AI導入における最大の課題は「取り組むための人材がいない又は不足している(562件)」であり、次いで「AI生成物の正確性への懸念(522件)」となっています。
自治体では、少子高齢化による職員数の減少や業務量の増加により、限られた人員で多様な行政サービスを維持しなければならない状況が続いています。
一方で、GIS(地理情報システム)や統計分析は、政策立案や施設管理、防災計画などに有効であることが分かっていても、専門職員が不足しているため十分に活用できていないケースも少なくありません。
そこで注目されるのが、生成AIとGISを組み合わせた「GIS AI」です。
本記事では、実際に行った実証結果をもとに、GIS AIが自治体の人材不足にどのように貢献できるのかを考察します。
なぜGISは広く活用されないのか
多くの自治体では、GISやダッシュボードは整備されています。
しかし、
・GISソフトの操作が難しい
・データ更新に専門知識が必要
・統計データの取得が手間
・分析結果の解釈が難しい
といった理由から、実際に活用できる職員が限定される傾向があります。
結果として、
「GIS担当者しか使えないシステム」
になってしまうことがあります。
GIS AIとは何か
GIS AIとは、
GIS
+
統計データ
+
生成AI
を組み合わせた新しい業務支援の考え方です。
従来は職員が行っていた
・統計データの検索
・CSVの取得
・GISへの登録
・分析処理
・地図作成
といった作業を、自然言語の指示から実行できるようにすることを目指します。
実証① 人口統計分析の自動化
地域GIS研究所では、
Codex CLI
+ e-Stat API
+ ArcGIS MCP
を利用し、人口統計分析の自動化を検証しました。
職員が
「高齢化率を取得してください」
と指示すると、
・e-Statから統計取得
・属性計算
・ArcGIS Onlineへの登録
・地図化
までを一連の流れとして実行できることを確認しました。
従来であれば複数のサイトやシステムを行き来していた作業を大幅に短縮できます。
実証② 健康遊具の優先整備地区の抽出
次に、豊島区をモデルケースとして健康遊具の優先整備地区を抽出しました。
分析では、
・高齢化率
・人口
・既存遊具の配置
・250m利用圏
を組み合わせて評価を行いました。
従来であれば半日程度かかる作業でしたが、統計データ取得からWebマップ作成まで約25分で完了しました。
重要なのは、単なる地図作成ではなく、
「どこに予算を優先投入すべきか」
という政策判断の支援ができた点です。
人材を増やすのではなく時間を生み出す
自治体における人材不足は、短期間で解決できる問題ではありません。
しかし、GIS AIは職員の代わりに判断するのではなく、
「判断するための材料を短時間で準備する」
ことができます。
例えばAIが統計取得やGIS更新を行っている間、職員は
・住民対応
・庁内調整
・資料作成
など別の業務を進めることができます。
これは実質的に人材不足を補完する効果を持っています。
正確性をどう担保するのか
生成AI活用において最も懸念されるのが正確性です。
今回の実証では、
「推測で人口値を作らない」
というルールを明示しました。
さらに、
・データソースの明示
・統計年次の確認
・利用フィールドの確認
を行い、説明可能な状態を維持しています。
また、MCP Inspectorを利用することで、
・どのデータを参照したか
・どの条件で検索したか
・どのレイヤを更新したか
を確認できます。
これはAI時代のジオプロセシング履歴とも言える仕組みです。
今後の可能性
今後は、
「高齢者が多いのに健康遊具が不足している地域は?」
「D判定の樹木が集中している公園は?」
「近くに鉄棒のある公園は?」
といった問いに対して、職員が自然な言葉で質問し、GIS AIが分析結果を提示する環境が現実味を帯びてきています。
これは、専門職だけが扱うGISから、全職員が活用できるGISへの転換を意味します。
まとめ
総務省調査によると、自治体における生成AI活用の上位は、
- 挨拶文作成
- 議事録要約
- 企画書案作成
- メール文作成
となっています。
現在は文書作成支援を中心とした活用が主流ですが、
GISと生成AIを組み合わせることで、
- 統計データの取得
- GISデータの更新
- 空間分析
- 地図作成
- 政策判断支援
までを自然言語で実行できる可能性が見えてきました。
また、総務省調査では導入課題として
- 人材不足(562件)
- AI生成物の正確性への懸念(522件)
が上位に挙げられています。
今回の実証では、
- 推測によるデータ生成を禁止する
- 利用した統計データを明示する
- MCPを利用して処理履歴を確認する
ことで、説明可能性と正確性を確保しながら分析を実施しました。
GIS AIは人材不足を単純に人員増加で解決するものではありません。
むしろ、
- GISの専門性の壁を下げる
- データ整理の時間を削減する
- 分析業務を支援する
- 説明責任を担保する
ことで、限られた人材の能力を最大限活用するための仕組みとして期待されています。
地域GIS研究所では、GIS・統計分析・生成AIを組み合わせた自治体業務への活用について、引き続き実証と研究を進めていきます。
参考資料
- 総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年6月30日版)」
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