~高齢者人口データを活用した公園整備の意思決定支援~
【自治体GIS×生成AIシリーズ】
本記事は、生成AIとGISを活用した自治体業務の実証シリーズの第3回です。
▶ 第1回:自治体GISとAIの融合
▶第2回:ArcGIS Onlineと生成AIを連携した人口統計分析の実証
背景
自治体では、
- 高齢化の進展
- 健康寿命の延伸
- 公園施設の老朽化
が課題となっています。
一方で予算は限られており、
どの公園から整備すべきか
を客観的に判断する必要があります。今回は高齢者人口と健康遊具配置から優先整備地区を抽出する実証を行いました。
今回の目的
豊島区を例に、
65歳以上人口
↓
健康遊具
↓
利用圏
を組み合わせ、
健康遊具の優先整備地区を抽出しました。
分析に使用したデータ
e-Stat
- 2020年国勢調査
- 小地域統計
- 年齢(5歳階級、4区分)別人口から町丁目単位の65歳以上人口
ArcGIS Online
- 自社ポータルサイト内の豊島区公園施設データ
- 健康遊具
- 公園名称
公園データ
自社のArcGIS Onlineに登録済みの豊島区公園施設データを利用しました。
分析対象は、
- 健康遊具
- 公園名
- 町丁目情報
です。
分析の流れ
e-Stat
↓
65歳以上人口
↓
ArcGIS Online
↓
健康遊具
↓
生成AI
↓
ランキング
↓
WebMap
実際に入力したプロンプト
今回の分析では、Codex CLIを利用し、3段階に分けて指示を行いました。
①健康遊具不足ランキングの作成
まず、豊島区遊具施設データと、e-Statの町丁目別高齢者人口を利用し、健康遊具不足ランキングを作成しました。
主な指示内容は以下のとおりです。
- ArcGIS Onlineから豊島区遊具施設データを取得
- 健康遊具のみを抽出
- e-Statから町丁目単位の65歳以上人口を取得
- 町丁目名で結合
- 健康遊具数と高齢者人口から不足度を算出
- CSVおよびMarkdownで出力
この段階で、
「高齢者人口に対して健康遊具が不足している町丁目」
を一覧化しました。
①のプロンプトの詳細
ArcGIS MCP、e-Stat統計ダッシュボードAPIを使って、豊島区の町丁目単位で「65歳以上人口に対して健康遊具が不足している町目」をランキング表にしてください。
前提:
- 豊島区の遊具施設データは、私のArcGIS Online組織アカウントにアップロード済みです。
- 遊具施設データには、遊具種別を示すフィールドがあるはずです。
- 健康遊具は、遊具種別フィールドの値から「健康遊具」またはそれに相当する種別を判定してください。
- 豊島区公式サイト内には町丁目単位の65歳以上人口データがないため、豊島区サイトから探すのではなく、e-Stat統計ダッシュボードAPIまたはe-Stat APIから町丁目単位の年齢別人口を取得してください。
- 取得できる最新年を使用してください。
- 町丁目名の表記ゆれがある場合は、正規化して結合してください。
- 町丁目境界データが必要な場合は、ArcGIS OnlineまたはLiving Atlasから利用可能な公的境界データを検索してください。
作業手順:
- ArcGIS MCPで、私のArcGIS Onlineコンテンツから豊島区の遊具施設データを検索してください。
- レイヤ構造を確認し、町丁目名フィールド、遊具種別フィールド、公園名フィールドを特定してください。
- 健康遊具のみを抽出し、町丁目単位で件数を集計してください。
- e-Stat統計ダッシュボードAPIまたはe-Stat APIから、豊島区の町丁目単位の65歳以上人口を取得してください。
- 町丁目名をキーに、65歳以上人口と健康遊具数を結合してください。
- 以下の指標を計算してください。
- 65歳以上人口
- 健康遊具数
- 65歳以上人口1,000人当たり健康遊具数
- 不足度スコア = 65歳以上人口 / max(健康遊具数, 1)
- 不足度スコアが高い順にランキング表を作成してください。
- 結果をCSVとMarkdownの両方で出力してください。
出力項目:
- rank
- 町丁目名
- 65歳以上人口
- 健康遊具数
- 65歳以上人口1,000人当たり健康遊具数
- 不足度スコア
- 該当する公園名
- 備考
注意:
- 町丁目単位の65歳以上人口が取得できない場合は、取得できなかった理由を明記し、代替案として国勢調査小地域、町丁・字等別人口、または住民基本台帳人口の利用可否を整理してください。
- 推測で人口値を作らないでください。
- 結果に使ったデータソース、統計年、フィールド名、結合キーを必ず明記してください。
② ランキング指標の改善
初回分析では、
不足度スコア
= 65歳以上人口 ÷ 健康遊具数
を採用しました。
しかし、
健康遊具0基の町丁目と1基の町丁目の差が十分に表現できなかったため、指標を改善しました。
追加した内容は以下のとおりです。
- 健康遊具なしフラグ
- 改良版不足度スコア
- 優先度区分(A~D)
- 町丁目内の公園一覧
その結果、
「どの公園が整備候補となるのか」
まで把握できるようになりました。
追加した内容は以下のとおりです。
- 健康遊具なしフラグ
- 改良版不足度スコア
- 優先度区分(A~D)
- 町丁目内の公園一覧
②のプロンプトの詳細
ランキング指標を修正してください。
現在の不足度スコア = 65歳以上人口 / max(健康遊具数, 1) では、
健康遊具0基と1基の差が小さくなっています。
以下の指標を追加してください。
- 健康遊具なしフラグ
health_equipment_zero = 1 if 健康遊具数 == 0 else 0 - 不足度スコア改良版
shortage_score_v2 =
65歳以上人口 * 2.0 if 健康遊具数 == 0
65歳以上人口 / 健康遊具数 if 健康遊具数 >= 1 - 優先度区分
A: 65歳以上人口1000人以上 かつ 健康遊具数0
B: 65歳以上人口1000人以上 かつ 健康遊具数1以下
C: 65歳以上人口700人以上 かつ 健康遊具数0
D: その他 - 町丁目内の公園名一覧
健康遊具がない場合でも、その町丁目内に存在する公園名を別列に出してください。
列名は all_park_names としてください。
CSVとMarkdownを再出力してください。
健康遊具不足ランキング結果例
| 順位 | 町丁目 | 65歳以上人口 | 健康遊具数 | 優先度 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 東池袋五丁目 | 1,106 | 0 | A |
| 2 | 池袋二丁目 | 1,025 | 0 | A |
| 3 | 長崎四丁目 | 987 | 0 | C |
| 4 | 要町三丁目 | 956 | 0 | C |
| 5 | 上池袋三丁目 | 951 | 0 | C |
実際の出力

③ WebMapの作成
最後に、ランキング結果を地図化しました。
主な処理内容は以下のとおりです。
- 町丁目ポリゴン取得
- shortage_score_v2との結合
- 優先度A~Dによる色分け
- ポップアップ設定
表示項目は、
- 町丁目名
- 65歳以上人口
- 健康遊具数
- 不足度スコア
- 候補公園一覧
としました。
これにより、
ランキング表だけでは分かりにくい地域的な偏在状況を視覚的に把握できるようになりました。
プロンプト③の詳細
豊島区健康遊具不足ランキングを地図化してください。
現在作成済みのCSVを利用し、
① 町丁目ポリゴンを取得
② shortage_score_v2 を結合
③ A~Dを色分け
A:赤
B:橙
C:黄
D:灰
でWebMapを作成してください。
ポップアップには
・町丁目名
・65歳以上人口
・健康遊具数
・不足度スコア
・候補公園一覧
を表示してください。
③の結果:健康遊具不足ランキング

③利用圏を考慮した分析
そこで次に、
健康遊具から250mの利用圏を作成しました。
分析手順は以下のとおりです。
健康遊具ポイント
↓
250mバッファ作成
↓
町丁目ポリゴン
↓
65歳以上人口との重ね合わせ
↓
利用圏内人口割合算出
さらに、
優先度
= 65歳以上人口 ×(1 − 利用圏内人口割合)
として再評価しました。
プロンプト④の詳細
豊島区の健康遊具ポイントを使い、250m徒歩利用圏を作成してください。
町丁目ポリゴンごとに、
・65歳以上人口
・健康遊具数
・健康遊具250m圏内人口割合
を算出してください。
新しい優先度を以下で算出してください。
優先度 =
65歳以上人口 × (1 – 利用圏内人口割合)
結果をWebMapとして作成してください。
④の結果:健康遊具250m利用圏分析

分析の結果、
健康遊具数だけでは優先度が高く見えた町丁目でも、
近隣公園の利用圏に含まれている場合は優先度が下がることが確認できました。
例えば、
上池袋一丁目
- 65歳以上人口:809人
- 健康遊具数:1基
- 250m圏内人口割合:97.79%
であり、
健康遊具数だけを見ると不足しているように見えますが、
実際にはほぼ全域が健康遊具の利用圏に含まれていました。
一方、
健康遊具利用圏のカバー率が低い町丁目では、
優先的な整備候補として抽出されました。
AIによる分析時間
今回の分析では、
- e-Statからの人口取得
- ArcGIS Onlineからの遊具データ取得
- 健康遊具抽出
- 250m利用圏作成
- 人口との空間結合
- 優先順位計算
- Webマップ作成
までを実施しました。
延べ処理時間は約25分でした。
従来であれば、
- 統計データ探索
- CSV加工
- GIS取り込み
- バッファ作成
- 空間集計
- 主題図作成
を手作業で行う必要があり、半日程度を要する作業です。
また、今回の25分の多くはAIとGISが処理を実行している時間であり、職員が画面の前で操作し続ける時間ではありません。
その間に、
- メール対応
- 提案書作成
- 打ち合わせ準備
など他の業務を進めることができます。
自治体にとっての価値
今回の分析は、
単に地図を作ることが目的ではありません。
本質は、
「限られた予算をどこへ優先的に投入するか」
を客観的に判断できることです。
例えば、
- 健康遊具
- 遊具更新
- 樹木管理
- 公園施設更新
などの分野に応用できます。
経験や勘だけでなく、
人口構成や利用圏を踏まえた説明可能な意思決定を支援できる点が大きな価値です。
おわりに
今回の実証では、
生成AI
×
e-Stat
×
ArcGIS Online
を組み合わせることで、
高齢者人口と健康遊具配置をもとにした優先整備地区の抽出が可能であることを確認しました。
これは単なるGIS分析の自動化ではなく、
統計データと空間情報を活用した政策判断支援の第一歩と考えています。
今後は、他市で進めている公園DXの取り組みにおいても、
- 遊具
- 樹木
- 公園施設
を対象に、
人口構成や利用圏を考慮した維持管理・更新計画への活用を検討していきます。
■ 関連記事
▶ 第1回:自治体GISとAIの融合
▶ 第2回:ArcGIS Onlineと生成AIを連携した人口統計分析の実証
▶ 第3回:生成AIとGISで健康遊具の優先整備地区を抽出してみた






