【調査レポート概要】AI×GIS分析で分かった室内イベントの「賑わい」は人数では測れない理由

■ 本記事のポイント

本分析では、
AIカメラとGISを用いて室内イベント会場を分析した結果、

「人が多い場所」が賑わうのではなく、

・人の流れ
・滞在
・入口との関係
・時間帯による変化

といった「構造」が、
賑わいに大きく影響していることが分かりました。

これは、
イベント運営だけでなく、
公共空間や施設配置の検討にも活用可能です。

■ 本分析の対象となった屋内イベント実証

横浜市で開催された「YOXO FESTIVAL 2026」において、
屋内イベント会場の人流分析を実施しました。

観測対象は、クラフトと魔改造エリアを中心とした会場内の動線で、
2026年1月31日(土)11:00~19:00、
2月1日(日)11:00~17:00の2日間にわたり実施しました。

本実証では、会場内外に5台のカメラを設置し、
入口付近の通過量と、内部エリアにおける賑わいの変化を
異なる指標として把握しました。

・通過量1:主会場の入口動線における延べ通過量
・通過量2:ESRIブース周辺の回遊状況を把握する補助指標
・賑わい度1~3:会場内部における滞留・往来の活発さを把握する指標

屋内イベントでは、単に「何人来たか」だけでなく、
入場後に人がどの場所へ移動し、どこで立ち止まり、
どのように賑わいが形成されるかを把握することが重要です。

しかし実際の運営現場では、

  • どの時間帯に人が増えたのか
  • どのエリアに滞留したのか
  • どのタイミングで混雑が発生したのか

といった「動き」こそが重要です。

本記事では、AIによる人流データを用いて、室内イベントにおける「賑わいの構造」を分析した実証結果をご紹介します。

図:カメラの配置箇所(上は室内、下は会場全体)

■ AIカメラで「人数」ではなく「賑わいの動き」を捉える

本実証では、カメラから取得した画像を用いて、
AIによる人物検出を1分単位で実施しました。

取得した people_count データは5分単位に集計し、
時間帯ごとの変化、エリア別の違い、
入口通過量と内部の賑わいとの時間差分析に用いています。

なお、本分析で扱う数値は、
個人を識別したユニーク来場者数ではありません。

入口の通過量には入退場や一時的な滞留が含まれ、
内部エリアの賑わい度には、
同一人物の滞在、往復、立ち止まりによる重複観測が含まれます。

そのため、本実証の目的は、
正確な来場者数を確定することではなく、

・どの時間帯に人の動きが強まったか
・どのエリアに滞留が生じたか
・入場後、どの程度の時間差で賑わいが広がったか

を、運営判断に利用できる形で可視化することにあります。

■ 2日間の観測で確認された賑わいの違い

主会場入口に設置した通過量カメラでは、
延べ通過量として次の結果が得られました。

・2026年1月31日(土):4,035
・2026年2月1日(日):2,665

また、会場内部の賑わい度エリア1~3を合算した
5分あたりの平均賑わい規模は、

・1月31日:約256
・2月1日:約248

となりました。
以下のグラフから、
曜日によって会場内の人流構造が異なることが分かります。

ここでいう賑わい規模は来場者人数ではなく、
会場内部で観測された活動量・滞留の強さを表す指標です。

1月31日は、午後にかけて複数のピークが現れ、
比較的高い賑わいが継続しました。

一方、2月1日は平均水準がやや低く、
人の動きが比較的分散した傾向が確認されました。

このように、同じイベント会場でも、
日によって人の集まり方や滞在の仕方が異なることを
データとして整理できます。

■ 入場後、奥側の賑わいは約20分遅れて形成された

本実証では、主会場入口の通過量と、
会場内部の賑わい度との時間差を分析しました。

2026年1月31日のデータでは、
入口付近の賑わい度エリア1は、
通過量の増加と同じ時間帯に強く連動しました。

・通過量1 → 賑わい度1:ラグ0分、相関係数 0.558

一方、会場奥側に位置する賑わい度エリア3では、
入口通過量の増加から約20分後に最も強い連動が確認されました。

・通過量1 → 賑わい度3:ラグ20分、相関係数 0.532

これは、来場者が入口を通過した直後に入口付近の賑わいを形成し、
その後、会場内を回遊しながら奥側のエリアへ移動・滞在する
可能性を示す結果です。

つまり屋内イベントの賑わいは、
一か所で同時に発生するものではなく、
会場内を時間差を伴って広がる構造として捉えることができます。

■ この分析が会場運営に役立つ理由

入口で人が増えた後、
どのエリアが何分後に賑わいやすいかを把握できれば、
運営側は先回りした対応を検討できます。

例えば、

・入口通過量の増加を確認した後のスタッフ移動
・奥側エリアでの滞留発生を見越した誘導
・混雑が生じやすい場所への案内表示の追加
・展示や体験コンテンツの配置改善
・通路幅や待機スペースの見直し

などです。

従来の来場者数集計では、
イベント全体の規模感は把握できても、
「どこで」「いつ」「どのように」賑わいが形成されたかまでは
説明しにくいという課題がありました。

AI人流データとGISを組み合わせることで、
屋内空間における人の動きと滞留を、
レイアウト改善や安全管理につながる情報として整理できます。

■ データ品質とプライバシーへの配慮

本実証では、2日間を通じてデータ取得は概ね安定していました。

・2026年1月31日の欠損率:1.04%
・2026年2月1日の欠損率:0.83%

欠損が発生した箇所については、
直前の有効値を保持する処理により、
時間推移の連続性を確保したうえで分析しています。

また、本実証では個人識別や個人追跡は行っていません。
画像から取得した人数カウントをもとに、
会場内の活動量や時間的な変化を分析しています。

公共性の高いイベント空間において、
プライバシーに配慮しながら、
運営改善に必要な人流傾向を把握するための手法です。

■まとめ:これからのイベント評価は「構造」で見る

YOXO FESTIVAL 2026 における屋内イベント人流分析では、
AIカメラによる1分単位の人物検出データを用い、
入口の通過量と会場内部の賑わいの関係を分析しました。

その結果、入口付近では人の流入とほぼ同時に賑わいが生じる一方、
会場奥側では約20分遅れて賑わいが高まる構造が確認されました。

これは、屋内イベントの賑わいが、
単なる人数の多さではなく、
入場、回遊、滞留という時間的なプロセスによって形成されることを示しています。

こうしたデータを活用することで、

・スタッフ配置
・混雑緩和
・会場レイアウト改善
・展示や体験コンテンツの配置検討
・次回イベントの運営計画

を、経験だけでなくデータに基づいて検討できるようになります。

AIカメラとGISによる人流分析は、
イベントを「何人来たか」で評価するだけでなく、
「人がどのように空間を利用したか」を明らかにし、
より安全で回遊しやすい会場づくりにつなげる手法です。

本取り組みの実績については、以下のページでも紹介しています。

自治体DX・都市データ活用の実績

詳細レポートはこちら

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